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街はクリスマス一色になっていた。このイベントがここまで浸透してきたのはいつからだろう。気がつけば、この時期の街は賑やかになっていた。一人でいたときは縁遠いものだったから特に意識はしなかったが、小香が家族で祝うものだと教えてくれて、去年から我が家でも祝うようになった。当日である今日は、夜にパーティをする予定だ。小香はごちそうを作ると張り切っている。その間に、私と小黒は街へ買い物に出ていた。小黒と小香へのプレゼント選びだ。 「でっかいツリーがあるよ!」 小黒は通りの中央に置かれたツリーを指さした。たくさんの飾りをつけられ、電飾で明るく照らされたもみの木だ。 「うちで飾ったやつよりおっきいなあ」 「そうだな。うちには入らないな」 「庭に置けばいいよ!」 庭には、飾り付けるのにちょうどよさそうな木は生えていない。居間に飾ったのは作り物の木だ。 商店街を進んで、玩具屋に入った。棚いっぱいに詰め込まれた玩具を見て、小黒は目を輝かせる。 「わあ、ロボットだ!」 ひときわ目立つところに、大きなロボットの玩具があって、小黒は駆け寄て箱を持ち上げた。小黒の顔より大きい。 「もう少し小さいのにしなさい」 「えぇー」 小黒は残念そうにしながら、ロボットを棚に戻す。 「じゃあねえ……ぼくね……」 店内の奥へ進み、棚に並んだ商品を吟味する。 「これにする!」 そう言って手に取ったのは少々古い形の飛行機の模型だった。 「それでいいのか?」 念の為確認したが、小黒は迷う素振りもみせず「うん!」とご機嫌に頷く。意外とすぐに決まったな、と思いながらレジに向かい会計を終えて、店を出た。 「あとは小香のプレゼントだね!」 「ああ。行こうか」 事前に欲しいものはないか確認していた。小香はすぐに思いつかないからあとで連絡する、と言って、一晩考えたあと、任務中に端末にメッセージが来た。いろいろ考えて決めたのだろうと伺えて、つい笑みが漏れた。 店に入って、目当てのものを探す。 「どんなのにするの?」 「そうだな……」 小香からのリクエストは、マフラーと手袋だった。そろそろ新しいものがほしかったようだ。具体的にどういうものにするかは任せると言われた。売り場に並べられた商品をじっくり見比べる。 「これかわいいよ。ふわふわしてるのついてて」 「そういうのもいいな」 小黒も一緒に選んでくれた。小香がいつも身につけていたものを思い出しながら彼女の好みかどうか考え、彼女の姿を思い浮かべながら、似合うかどうか悩む。 「へへ、なんか楽しいね!」 小黒は自分のプレゼントを選ぶときよりじっくり時間をかける。愛する人のために贈る品物を考えるのは、楽しい時間だった。私が選んだもので彼女が喜んでくれる姿を想像するだけで心が暖かくなる。 「小香、こういうの好きかな?」 「そうだな……」 小黒が手に取った手袋を見て、彼女がつけているところを想像してみる。普段着ている服にも合うだろうか。 「よし、これにしようか」 「うん! 決まり!」 その手袋に合う色のマフラーも買って、外に出た。少し暗くなってきている。どこからかいい匂いがした。 「師父、美味しそうな匂いがする……」 よだれを出しそうな様子で小黒も鼻を鳴らす。 「小香がごちそうを用意してくれているんだ、帰るまで……」 我慢だ、と言いかけて、匂いの元の屋台を発見した。 「……少しだけにしておこう」 「うん!!」 目に入ってしまったら抗うのが難しかった。少しなら、支障はないだろう。小香の作ってくれた料理ならいくらでも食べられる。ツリーのそばに置かれたベンチに座り、クリスマスの雰囲気に染まった商店街を眺める。 「小香も一緒だったらよかったね」 「そうだな」 来年もきっとこんな様子だろう。クリスマス限定の店舗や商品もある。今度は小香も連れて買い物に行こう。 「食べ終わった?」 「うん、帰ろう!」 小黒はきれいに梱包されたプレゼントの箱を大事に持って立ち上がる。帰れば、小香が卓に並べられたたくさんの料理と共に迎えてくれるだろう。今間食したばかりなのに、とても腹が減った。彼女の笑顔を見るために、暗くなりかけた道を急いで歩いた。 ← | → |