67.峙山公園 二

紅葉を堪能したあとは、子供向けの遊具がある広場へ向かった。遊具といっても、ちょっとした遊園地のような、それなりの乗り物がたくさんあった。
「あれ乗ろう! 海賊船!」
小黒がさっそく指さしたのは、振り子のように揺れる海賊船だった。あれなら全員で乗れそうだ。さっそく並んで、船に乗り込む。四列だったので、子供たちが前に乗り、私と无限大人はその後ろに座った。それほど大きくはないけれど、思ったより大きく前後に揺れて、なかなか迫力があった。
「わーっ」
みんな声を上げているので、私も一緒に声を出してみる。无限大人が心配そうな視線を向けてきたので、怖がってるわけじゃなく楽しいんだと笑って見せた。
小黒たちは楽しそうに、目に付いた乗り物に片っ端から乗っていく。私と无限大人は子供たちに何かないように目を配りながら、遊具で遊ぶ子供たちの写真をたくさん撮った。
「これで全部乗ったかな?」
広場のすべてを回り終えて、小黒は乗り逃しているものがないかと広場を見渡す。
「全部みたいだね。満足した?」
阿根くんもしっかりと広場を確かめて、みんなに訊ねた。
「うん!」
小白ちゃんが真っ先に元気に返事をして、小黒と山新ちゃんも笑顔で頷いた。
「そろそろお腹空いたな!」
「あはは、私も!」
そろそろ日が傾いて来ている。夕飯にちょうどいい時間だ。
「公園の近くのお店で食べて帰ろうか」
无限大人の提案にみんな賛成して、公園を去ることになった。
近くにファミレスを見つけたので、そこに決まった。
「何名様ですか?」
「6人で」
「こちらのお席へどうぞ」
店員さんに案内された席に座り、メニューを開く。中国料理も、洋食もあった。
「ぼく、ステーキ!」
「私、どうしようかなあ」
「葱油拌面にしよっと」
「僕は荷香滑鶏飯にしようかな」
それぞれ食べたいものを決めて、タブレットで注文する。料理が来るのを待つ間、小黒たちは学校のことを話していた。それを聞いていると、しっかり学校生活に取り組んで、頑張っていることがよくわかる。まだ他の生徒たちとはあまり交流できていないみたいだけれど、少しずつ歩み寄っているようだ。
すぐに料理が運ばれてきて、食事が始まったけれど、おしゃべりは止まらず、みんなしっかり食べながらもよく喋る。无限大人と二人きりの静かな食事もいいけれど、やっぱり大勢でにぎやかに食べるのも楽しかった。
デザートまでしっかり食べ終え、店を出る頃には空は暗くなっていた。ここからまた電車を乗り継いで家に帰ることになる。
「みんな、疲れてない? 大丈夫?」
「元気いっぱいです!」
小白ちゃんが両腕を上げて満面の笑みで答えてくれた。
「甘いもの食べたから復活しました」
山新ちゃんも足取り軽く歩いていく。
「じゃあ、家につくまで後ちょっと頑張ろう!」
改札を抜けて、ホームに並び、電車に乗り込む。席に座ると、しばらくは話していたけれど、そのうちに小黒と小白ちゃんは眠ってしまった。二人とも頭を寄せて、互いにもたれかかるように寝ている。
「ふふ。かわいい」
あどけない寝顔が愛らしくて、つい眺めたくなってしまった。
阿根くんと山新ちゃんとは途中の駅で別れた。阿根くんは一人で帰れるからと言い、山新ちゃんは家族の人が改札まで迎えに来てくれていた。小白ちゃんを家まで送り届け、今日のお出かけは終わる。
「今日はありがとうございました!」
小白ちゃんは礼儀正しくお礼を言う。
「すみません、お世話になって。ありがとうございました」
迎えに出てきた羅さんは申し訳なさそうに小白ちゃんの頭に手を置いた。
「いえ、こちらこそ、いつも小黒と遊んでもらってありがとうございます」
感謝を返して、お暇を告げる。
「小黒、また学校でね」
「うん! おやすみ小白」
小白ちゃんが手を振って、小黒も手を振り返した。
羅家を離れると、小黒は私の手と无限大人の手を掴み、握ったまま歩き出した。私はその手を握り返す。
「小黒もありがとうね。たくさん遊べて楽しかったよ」
「ぼくも二人と遊べて楽しかった!」
三人で並んで歩くのは久しぶりな気がする。これから、小黒はどんどん大きくなって、こういう機会も減っていくのだろうと思うと少し寂しくなってしまった。
「また遊ぼうね」
「うん!」
微笑み合う私と小黒を无限大人も見守ってくれていた。

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