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今年の小黒の誕生日も、また館で行われることになった。ただし今回は小黒の希望で小白ちゃんたちも呼ぶことになった。館の関係者ではない外部の人間が館に来るなんて、滅多にないことだ。それはいい傾向に思う。ケーキは別に用意されることになったので、今回は飾り付けだけ手伝うことになった。 「小香」 誕生日の前日、无限大人が真剣な顔で話しかけてきた。 「どうしました?」 「明日なんだが、小黒に長寿麺を作ってやりたいんだ。手伝ってもらえないだろうか」 「もちろんです! 美味しいの、作りましょう」 パーティには食べ物がいろいろ用意されるだろうけれど、小黒はよく食べるし、たぶん麺が増えても大丈夫だろう。何より、无限大人の気持ちを大事にしたい。 当日は館の食堂を借りて、无限大人と事前に長寿麺を作ってから会場に向かった。 会場には、館の執行人たちだけでなく、別の館の館長たち、そして諦聽(老君)まで集まっていた。改めて、小黒の人脈の広さに驚く。 「げ」 プレゼントの箱を抱えたナタ様が、无限大人を見て眉を顰めた。 「おまえ、それプレゼントするつもりか?」 近くにいた冠萱さんも、无限大人が長寿麺を持っていることに気づいて苦い顔をする。 「ああ」 无限大人は顔色を変えずに答える。そして私の方を振り返って、微笑んでみせた。 「小香と一緒に作ったからな。味は保証されている」 「なんだ、そういうことは先に言え」 「よかった、安心しました」 二人はあからさまにほっとした顔をする。无限大人は気分を害するどころか、なんだか嬉しそうだった。无限大人が料理苦手なこと、意外と広く知られているらしい。 「小黒、誕生日おめでとう」 「師父! 小香!」 ケーキのそばで、小白ちゃんたちと一緒にいた小黒のところへ、お祝いに向かう。ジュースを飲んでいた小黒はぱっと立ち上がり、長寿麺を受け取った。 「小香と作ったんだ」 「うん! ありがとう!」 「わあ、長寿麺だ」 隣にいた小白ちゃんは、暖かな湯気の匂いをかぐ。 「小白も食べる? 師父は料理下手なんだけどね、小香がちゃんと作ってくれてるから美味しいよ」 「あはは! お師匠さんなのに!」 小白ちゃんにお箸を渡すと、小黒と一緒に美味しそうに長寿麺を食べてくれた。 「无限大人、香さん。初めまして、羅根です」 タイミングを見計らって、眼鏡の男の子が声を掛けてきた。小白ちゃんの従兄弟だ。そして、ただの人間ではなく、術を使えるそうだ。小黒から話は聞いていたけれど、なかなか会う機会がなかった。 「こんにちは、阿根くん。会えて嬉しいな」 「僕もです。ご結婚されたって小黒から聞きました。おめでとうございます」 そう言って丁寧に頭を下げてから、无限大人の方を見る。 「彼からも、おめでとうと伝えて欲しいと」 「そうか。ありがとう」 彼? と思ったけれど、无限大人はそれだけで誰のことか察したらしく、深くは訊ねなかった。気になるけれど、二人の間だけの話なら聞かずにおこう。 小黒はたくさんのプレゼントをもらい、プレゼントの山に埋もれてご機嫌で料理を食べていた。小白ちゃんも山新ちゃんも、妖精たちの中にいても気後れせず、一緒に楽しんでいる。改めて、いい子たちと出会ったなと笑みが零れた。 ← | → |