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「うーん、熱っぽい……」 自分で額に手を当ててみて、やっぱり熱い気がする。ちょっと寒気もするようだ。 「風邪ひいた?」 「あやしいかも……」 雨桐に答えながら、悪化する前に片付けてしまおうと目の前の書類に集中した。なんとか仕事を終わらせて、家に帰る間も熱が上がっている予感がした。 「ただいま」 「おかえり、小香」 リビングにいる小黒に声をかけて、買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞う。体温計を引っ張り出してきて、熱を測ってみると、微熱ではあるけれど、発熱していた。 「ううん、上がらないといいなぁ……」 そう呟いてみたけれど、関節が少し痛んでいて、どうも風邪のかかり始めという雰囲気だ。 「小香、熱あるの?」 「大丈夫、ちょっとだけだから」 心配そうな小黒に笑って答えて、夕飯の支度にかかる。ご飯が炊けるころに、无限大人が帰ってきた。 「ちょうどご飯できてますよ」 「うん。……小香」 「はい?」 无限大人が私を呼ぶので、手を洗ってそちらへ行くと、无限大人は私の手を掴み、顔をじっと見つめてから、おでこに触れた。ひんやりとした手のひらの感触に目を瞑ってしまう。 「ひゃっ」 「熱があるな」 「な、なんでわかったんですか……」 「わかるよ」 无限大人は少し厳しい顔をする。 「夕飯の支度をさせてしまってすまない」 「いえ、寝込むほどじゃないからと思って。微熱ですよ」 「食欲はある?」 「はい」 无限大人はしぶしぶ手を離して、一緒に残りの支度を手伝ってくれた。小黒と三人でご飯を食べて、片付けは无限大人がしてくれた。ありがたく甘えることにして、寝室に引っ込む。 「今日は早めに寝なさい」 「そうします。明日、悪化してたら病院に行きます」 「そうだな。上がらないといいが……」 无限大人は心配を滲ませた表情で私の頭をそっと撫でた。 「あ、でも、寝室分けた方がいいですよね。もし移したら……」 「その心配は必要ないよ。そばにいさせてほしい」 无限大人は私の身体を腕の中に抱き込んで、ぎゅ、としてくれる。私も、久しぶりに体調を崩して、少し心細かったから、とてもありがたかった。 「急に寒くなったから、やられちゃったのかも……」 「今朝は冷え込んだからな。もっと部屋を暖めておくべきだった。今は寒くないか?」 「大丈夫です。あったかい」 无限大人の胸元に顔を押し付けて、両足を縮める。 「无限大人は、病気しないんですか?」 「しないよ」 「いいなぁ……」 「代わってやれたらいいんだが」 「それは……だめです。无限大人には元気でいてもらわなきゃ」 でも、一緒にいても問題ないとわかってほっとした。 「小黒もですか?」 「そうだな。人間の病にはかからないよ」 「そっか、よかった……」 学校に行くのを楽しみにしている小黒に、もし移してしまって休むことになったら可哀想だ。そうならなくて安心した。 「君は自分の心配をしていなさい」 「はい……」 「もし寝込むことになっても、他のことは気にしなくていい。私がやるから」 「ありがとうございます……。あ、ご飯は買ってくださいね。作らなくていいですから」 「…………。……わかっている」 「ふふ。お願いします」 不服そうに眉を寄せる无限大人に肩を揺らして笑う。 「頼もしいな」 「君は安心して寝ているといい」 「そうさせてもらいますね。ふふふ」 明日のことは明日考えることにして、今は无限大人の腕の中で、穏やかに眠りについた。 ← | → |