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ハルビン氷祭りは太陽島公園で行われるので、その付近にホテルを取った。飛行機に乗ってハルビンまで向かい、ホテルに到着する。 「うう、寒かった……」 温められた部屋の中に入って荷物を置き、ほっとする。最高気温でもマイナスなので、体感したことのないくらい厳しい寒さだ。しっかり防寒をしてきたけれど、想像以上だった。小黒はぱっと猫の姿になってベッドの上で飛び跳ね、具合を確かめている。 「少し暖まってから行こうか」 「はい……」 私の赤くなった鼻を心配そうに見ながら、无限大人がそう言ってくれる。でも、これから雪像を見に行くというのに、こんなに寒がっていて大丈夫かと心配になる。 「お茶を飲みなさい」 「ありがとうございます」 備え付けのポットとティーパックでお茶を淹れてくれたので、ありがたく飲む。暖かな液体が咽喉から胃に流れ込み、じんわりと身体の中から熱が染み渡った。 「ふぅ……」 落ち着いてきたので、小黒と一緒に窓から街を眺める。大陸の最北にある省で、隣国の文化が入り交じり、異国情緒を感じる街並みになっている。街中には雪は積もっていなかった。今日もよく晴れている。曇っている日はもっと寒いのだろうか。これ以上寒くなったら、動けなくなりそう。もう一枚重ね着していこう。 改めて武装を整えて、覚悟を決めていざ外に出た。帽子も被って耳も隠しているけれど、目元だけはどうしても外気にさらされてしまう。 「うう……! 凍る!」 「動けばあったかくなるよ!」 「うう……!」 小黒に励まされても唸ることしかできない。小黒も无限大人も厚着しているけれどそこまで寒くなさそうで、私ばかり寒がっている。 「ロープウェイに乗って島まで行こうか」 无限大人は地図を見ながらロープウェイ乗り場まで行く。なんだかお城みたいな建物で、ロープウェイ乗り場に見えなかった。 「わあ、真っ白!」 ロープウェイに乗り込んで、椅子の上に立膝で座り窓から外を眺めて、小黒が声を上げる。 「松花江が凍っているんだな」 「川が凍っちゃってるんですか? すごい……」 「人がいるね。何してるんだろう」 「スケートかな。氷の上を滑るんだ」 「へえー!」 凍った川の上にはたくさんの人が集まっていた。簡単に割れないくらい、分厚い氷のようだ。これだけ寒いのだから、あり得ることなのだろうけれど、スケールの大きさに圧倒された。 ロープウェイを下りて、太陽島公園の入場チケットを購入する。中には、大きな雪像がたくさん作られていた。 「わあ、おっきい!」 雪像の大きさに両手を上げて、歓声を上げる小黒を写真に撮ろうとするけれど、手袋をしているのでうまくいかなかった。でも、手袋を外す勇気がない。 「私が撮ろうか」 「お願いします」 大人しくカメラを无限大人に渡す。小黒はカメラを向けられて、楽しそうにポーズを決めた。 「あ! あれはなに?」 「滑り台だな」 小黒が見付けたのは氷でできた滑り台だった。子供たちが滑って遊んでいるので、実際に滑ることができるみたいだ。小黒もさっそくその中に混じって、階段を駆け上がり、上まで行くと、見てて! とこちらに手を振ってから勢いよく滑り降りた。无限大人はカメラを動画モードにしてしっかり記録していた。 ゆっくり雪像を眺めて一周するころには空に朱が差し始めていた。 「そろそろご飯にしようか」 島の中にあるお店を見付けて、そこでご飯を食べることにする。店内はとても暖かく、凍り付いていた身体がじわりと解けて、深い息を吐いた。この後は、太陽島西にあるハルビン氷雪大世界の方にある氷の彫刻を見に行く。こちらはライトアップされるので、夜に見るのがいいそうだ。 「冷たいな」 「凍りました……」 无限大人が手袋を外して私の頬に触れる。无限大人の手の感触がぼんやりとしているくらい、肌の感覚が鈍っていた。 「でも、ライトアップみたいから、頑張ります」 「無理はしないように」 「あったかいものたくさんたべます!」 メニューを見て、暖まりそうなものを選ぶ。 「小香、手温めてあげる」 小黒も手袋を外して、私の右手をしっかりと握ると、はーっと息を吹きかけてくれた。 「私はこっちを」 无限大人は左手を握って、擦って温めてくれる。二人に手を握られて、照れと嬉しさで身体の中からぽっとなる。 「あはは。ありがとうございます。あったかいな」 美味しいごはんで胃の中にも熱を入れて、外に出る準備は万端に整った。 ← | → |