![]() |
「こんにちは。今日はよろしくお願いします!」 女性は笑顔で迎えてくれた。今日は、結婚式に着る衣装を決めにレンタル衣装屋に来ていた。无限大人とは時間が合わなかったので、一人だ。 「どんなドレスを着たいとか、ご要望はございますか?」 「そうですね……。たくさんあって悩んじゃうな」 お店にはずらりとドレスが並んでいる。どれも同じ白だけれど、形も生地も模様も様々で、目移りしてしまう。 「何着か試着してみましょう」 「お願いします」 悩みながら、いくつか選んで、試着してみる。ブライダルインナーを着けて、ぎゅっと身体を締め付けるようなラインのドレスを身に着けると、雰囲気ががらっと変わってそれだけで気分が高揚した。 「わ……すごい、かわいいドレス……」 「奥様がかわいらしいんですよ。とてもお似合いです」 奥様、と言われて照れてしまった。これを着て、当日无限大人と並ぶところを想像すると意識が飛んでしまいそうなくらい刺激的だった。 「でも、こちらも似合いそうです」 スタッフさんはてきぱきとドレスを着せ替えてくれる。何着か着てみたけれど、どれもかわいくてなかなか決められなかった。 「うーん……どうしようかな」 「どれもそれぞれ素敵ですよね」 「そうなんですよ。でも、うーん、これがいいかな……!」 僅差でシルエットが一番気に入ったドレスを改めて見て、思い切って決めることにした。他にも決めることがいろいろあるから、あまり時間を掛けてはいられない。 「では、次は漢服を選びましょう」 「はい!」 ここには、漢服の婚姻衣装もある。以前来たものよりずっと豪華で、刺繍もりっぱなものが並んでいた。形も時代によって様々で、ドレスを選ぶよりもっと骨が折れそうだった。 「これもかわいいなぁ。こっちもかわいい!」 「たくさんありますからね。じっくり選んでください」 スタッフさんがそう言ってくれるので、ひとつひとつ見て確認する。 「これと……、これもいいな。あとこれと……」 とりあえず気に入ったものをピックアップして、並べて選ぶことにした。 「よし。こんなものかな」 ようやく五着を選んで、鏡の前に移動する。スタッフさんが羽織らせてくれて、雰囲気を確認した。 「こちらの衣装は、刺繍がきれいに見えますよ」 「本当ですね。きれいだな」 「こちらは、シンプルですが美しさが引き立ちますね」 「きれいなシルエットですよね……!」 「こちらもよくお似合いですよ」 「やっぱりどれも素敵だな……!」 一着ずつ羽織ってみて、また悩んでしまう。无限大人は、どんな衣装を選ぶんだろう。並んだときに浮かないようなものにしたい。 「そうすると……これかな……」 「いいと思います! 一番奥様の雰囲気を引き立てるお衣装だと思いますよ」 「ありがとうございます……。これに決めます!」 衣装を決めた後は、アクセサリーを選ぶことになった。ドレスの分と漢服の分をそれぞれ選び、最後に靴を選ぶ。 「以上で、終わりです。お疲れさまでした」 すべて選び終わって、一息つく。なんとか終わった。レンタルする内容について書類にまとめてもらい、帰宅する。帰る途中で、无限大人から電話があった。 『もう終わった?』 「はい。ちょうどさっき終わりましたよ」 『どんな衣装を選んだ?』 「ふふふ。素敵なの選びましたよ!」 『当日が楽しみだな。美しく着飾った君を早く見たいよ』 「えへへ……。本当に、楽しみです」 電話を切ると、早く会いたいという気持ちが強くなった。電話で話すだけでは全然足りない。家に帰る道のりを歩く足取りは、ふわふわと浮ついていてとても軽かった。 ← | → |