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「これで、名実ともに夫婦となられたんですね。おめでとうございます」 休憩中、お茶を飲みながらの会話の途中、潘靖から祝いを受けた。 「うん。ありがとう」 これからは人の社会の中で生活することになる。ずいぶん長いこと離れていたが、小黒と小香に連れ戻してもらった。かなり社会は様変わりしたが、じきに慣れるだろう。彼女は戸籍にこだわらないと言ってくれたが、やはりある方が便利だろう。これから子供を作ることも考えると、ないと不都合がある。それに、籍を入れることを、彼女は喜んでくれた。やはり、不安にさせていた部分もあると思う。用意してよかったと思えた。 「それで、結婚式はおやりにならないのですか?」 「はっ」 潘靖に何気なく言われて、雷に打たれたような思いがした。そうか。結婚式。何か忘れている気がしていた。 「うん。やろう」 きっと、彼女も望んでくれるだろう。伝えたとき、どんな顔をするだろうか。戸籍や家のことを話したときのことを思い出して、笑みを零した。 「でしたら、私たちに任せてください」 「しかし、そう規模の大きいものでなくとも……」 「ですが、あなたのお祝いなのですから、たくさんの妖精が参加したがると思いますよ」 潘靖はすっかりやる気のようだ。ありがたいが、身内で行う小規模なものを考えていた。 「……では、任せる」 正直、こういうことには不得手だ。潘靖に任せれば間違いはないだろう。さっそく小香の家に帰って、この話を伝えた。 「結婚式……!」 「うん。潘靖が手配してくれるそうだ」 「館長直々に……!? わあ……どうしよう、嬉しいです……!」 小香はまた泣きそうになっていた。目に涙をいっぱい溜めて、幸せそうに花が綻んだような笑みを浮かべる。 「衣装はどうしようか?」 「あっ、衣装! ええと、どうでしょう……漢服とか……」 「ドレスは?」 「どっちも着てみたいです……! どうしよう」 「では、両方にしよう」 「えっ! そんな、贅沢な」 「いいだろう。私が見たいんだ」 「うう、私も、无限大人の正装と漢服、両方見たいです……」 感極まって頬を上気させて、いっぱいいっぱいになりながらも、なんとか答えようとする様子がかわいらしい。 「わあ、どうしよう。幸せなことがいっぱいすぎます……。私もう死ぬんでしょうか」 「縁起でもないことを」 「だって、こんなに一気にきちゃったら、受け止めきれないです!」 涙を拭いながら、彼女は満開の笑顔を私に向ける。 「ありがとうございます。无限大人が、たくさんの幸せをくれるから」 「私は君にもらったものを返しているだけだよ」 「そんなことないです。无限大人の愛情深さに、溺れてしまいそう」 冗談めかしてそう言うので、額に口づけをした。溺れているのは、私の方かもしれない。 「大好きです」 「好きだよ、小香」 声に出して伝えるたび、想いが重なって深まっていく。 「あっ、そうだ、館から家の候補を何件かもらったんです。あとで小黒と一緒に見て決めましょう」 「うん。でも私は、君と小黒が選んだところでいいよ」 「何か要望とかないですか?」 「うん」 「私は、庭が欲しいです。外でご飯が食べられるような」 「それはいいな」 「あとは、部屋数が気になりますね。小黒の部屋と、それから……」 「寝室は君と同じがいい」 「えっ」 要望はないと言ったが、部屋数と聞いて譲れないことがあることに気付いた。 「……はい……私も……一緒がいいです……」 小香は照れながらも頷いてくれた。ベッドも大きいのをひとつ買おう。 ← | → |