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春節も終わり、またいつもの日々が戻ってきた。職場に无限大人が訪ねてきて、一緒に食堂でお昼を食べることになった。ご飯を食べ終わって、そのまま話をしていると、大きな足音が近づいてくるのが聞こえた。 「无限ー!!」 「ん」 背の高い妖精が、両手を振り回してこちらに向かってきていた。无限大人はぱっと立ち上がり、後ろから抱き着こうとした妖精は両腕で大きく宙を掻き、よろめいた。 「うおっと」 「紅榴」 「ははっ! 久しぶりだな! 无限!」 无限大人に紅榴と呼ばれた妖精はまるで気にした風もなく、満面の笑みを浮かべて无限大人に向き合った。无限大人よりずっと背が高い。頭には二本の角があり、金色の髪に、青い瞳。口には牙がのぞいている。なんだか、すごく迫力のある妖精だ。 「仕事でこっち来たんだ。无限いるかなーと思って探してみたらいた!」 「そうか。真面目にやっているようだな」 「えらいだろ! 私だってちゃんと働けるんだぜ。なあ、ご飯もう食べた? 一緒に食べようぜ!」 「すまないが、もう済ませた」 「そうなの? 残念! でもしばらくここにいるから、明日は一緒に食べよう!」 「明日は別のところへ行く」 「ええー!!」 紅榴さんは全身で无限大人と出会えた喜びを表しているけれど、无限大人は淡々としている。二人はどういう関係なんだろう。 「なんだよ、せっかく龍遊来たから、无限と遊べると思ったのに……」 紅榴さんはすっかりしょげてしまった。身体は大きいけれど、大きく感情を表現するところを見ると、幼く見える。 「騒がしくてすまない」 「え? いえ、私はぜんぜん。久しぶりにお会いするんでしょう? 積もる話でも……」 「ん?」 ちょっとうんざりしてる感じの无限大人が珍しくて、二人のやりとりを面白く眺めていたから、気にしていないと首を振った。すると、唐突に紅榴さんの視線が私に向けられ、ぐっと腰を折って顔をぐいっと近づけてきた。瞳を丸く見開いて、凝視されるので肩を竦める。 「なんだ、連れがいたのか。小さくて見えなかった」 「失礼だろう。顔を近づけるのをやめなさい」 「人間じゃん。ここの職員?」 「はい、そうです」 无限大人に腰を引かれて、後ろに下げられ、紅榴さんと距離を開けられた。そして无限大人は改めて私を紹介してくれる。 「彼女は小香。私の大切な人だ」 感情を込めて伝えられた言葉に、ぽっと頬が熱くなる。こればっかりは、いつまでも慣れない。 「小香? どーも! 私は紅榴。无限の弟子だ!」 「弟子じゃない」 「よろしくお願いします……ん? どっちなんですか?」 胸を張って自己紹介をする紅榴さんの言葉を无限大人は無情にも否定する。 「昔拾って、館に届けただけだ」 「私が火属性だからって修行つけてくれないんだ! ケチ!」 「そうなんですか」 確かに、小黒は无限大人と同じ属性だった。やっぱり、属性が違うと教えるのも難しいんだろうか。 「紅榴。私たちはもう行かなければならない」 「わかった!」 无限大人が別れを切り出そうとすると、紅榴さんは意外にも物分かりよく頷いた。 「じゃ、またあとで話そうな!」 にかっと笑って、手を振って去っていく。なんだか勢いのある妖精で、飲まれてしまいそうだった。 「无限大人、好かれてますね」 「相変わらずうるさいやつだ……」 无限大人は少し疲れた顔をしていた。无限大人が手こずってるのは珍しくて、ちょっと面白い。 「まだここにいるそうですから、また会えるといいですね」 「加減のわからない子だから、君に迷惑をかけるかもしれないが……」 「いえいえ。昔の无限大人の話、聞けるかもしれないですし」 「それは……。聞かなくていい」 「えー。知りたいです」 焦燥気味の无限大人が面白くて、ついからかうようなことを言ってしまう。このままもっと話していたいけれど、そろそろ休憩時間も終わりだ。 「それじゃあ无限大人、私はそろそろ行きますね」 「うん。……」 「大人?」 一歩踏み出そうとしたけれど、无限大人がじっと黙って私を見るので、向き直る。无限大人は名残惜しそうに見つめてくる。その眼差しがくすぐったくて、笑みが零れた。 「もう、二度と会えなくなるわけじゃないんですから。无限大人も、お仕事頑張ってくださいね」 「……うん。君も」 ようやく无限大人も笑みを作って、吹っ切るように顔を上げた。 「夜、もし時間があったら、うちでご飯食べましょう」 そう付け加えると、嬉しそうに表情を輝かせてくれた。 「肉が食べたい」 「ふふ。わかりました」 「必ず時間を作る」 「はい。待ってます」 「……では」 「また」 今度こそ別れを告げて、无限大人に背を向ける。角を曲がるときに振り返ってみたら、まだこちらを見ていたので、手を振った。无限大人も手を振り返してくれた。 ← | → |