![]() |
久しぶりに休みが重なって、无限大人と小黒がうちに来た。夕飯を食べて、夜の時間をゆっくり過ごしていると、いままでよりずっと二人と距離が近づいているような気がする。家族だと思ってると伝えられたことで、また小黒が家族がどういうものか実際に感じたことで、より気安く接することができるようになったと思う。 「次、小香の番だよ」 「うん、えーと……」 小黒が手札を差し出してくるので、どれを取ろうか悩む。私は今ジョーカーを持っていない。だから、小黒か无限大人が持っているはずなんだけど、どっちが持ってるだろう。小黒の顔を見ながら手札を選ぶ。右側に手を持っていくと、小黒の口角が上がる。左に持っていくと、眉をしかめる。これかな、と思って引いたら、小黒がにっこりして、私の手元にジョーカーが来た。 「へへ!」 「あー、しまった」 小黒がにやりとするので、困ったふりをする。无限大人をちらりと見ると、ちょっと笑っていた。私は身体の後ろでカードを混ぜて、无限大人の前に差し出す。 「はい!」 「うん」 无限大人はじっとカードを見て、ぱっと一枚引いた。ジョーカーだ。私はポーカーフェイスできていると思ったんだけど……。どうしてわかったんだろう。なんかジョーカーを当てるゲームになってるし。 「さあ、小黒」 「むむむむ……」 小黒はぎゅっと眉を寄せて目を凝らし、カードを透視しようとでもいいように見つめる。そして一生懸命悩んでから一枚引いて、ぱっと笑った。そろった八のカードを二枚捨てた。 「あと一枚ー!」 残った一枚のカードを嬉しそうにこちらに向けてくるので、悔し気に引くと、空になった両手を上げてわぁいと叫んだ。 「ぼくの勝ちー!」 「負けちゃったなぁ」 「へへん!」 「今日はここまでにしようか」 「そうですね。小黒、もう寝ようか」 「ええ、もうちょっと遊ぼうよ!」 ぐずる小黒をなだめながら、片づけをして、寝る準備をする。最初は頑張っていたけれど、瞼が落ちそうになるのは止められないようで、うつらうつらしてくる。 「師父、小香、おやすみ……」 「おやすみなさい」 布団に横になると、すぐに安らかな寝息が聞こえてきて、そっとドアを閉める。ソファに座る无限大人の隣に行って、触れそうなくらい近くに座る。无限大人は腕を回してきて、肩を引き寄せるので、頭を无限大人の肩に乗せた 「そのうちに、家を買おうか」 「家を?」 突然の言葉に、驚いて顔を上げる。うん、と无限大人は頷いた。 「考えていたんだ。前から。こうして君の家に世話になるたびに、一緒に住めたらいいと」 「でも……仕事が」 「うん。それは大丈夫だ。すぐにというわけではないが、君はどうだ?」 「それは、もちろん、一緒に住みたいです!」 聞かれて、間を開けずに即答する。 「はは。よかった。小黒にも、落ち着ける場所がある方がいいだろうから」 「そうですね。いままでの生活も楽しそうでしたけど」 「我慢をさせてしまうこともあったからな。もう少し、一緒にいられる時間も増やせると思う」 「本当ですか?」 執行人の仕事が忙しいことはわかっているけれど、やっぱり一緒にいてくれるならそれが一番だ。小黒の寂しい気持ちが、満たされるといい。 「どんな家にしようか。考えておいて」 「はい……! わあ、楽しみになっちゃいました。どんな家がいいかな……」 「小黒にはもう少ししたら私から話すよ」 「わかりました」 生活が大きく変わる予感がして、どきどきしてくる。无限大人は今の方が都合がいいだろうからと、一緒に住むことは考えていなかった。だから、无限大人から発案してくれたことが嬉しい。一緒に住めたら、本当に素敵だ。出かける无限大人をいってらっしゃいと見送って、帰ってきた无限大人をおかえりなさいと出迎える。そんな日々が、早く来て欲しい。 ← | → |