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昼には釣りから男性陣が帰ってきたので、そうめんを作ってみんなで食べた。 「小黒、釣りはどうだった?」 「いっぱい釣れたよ!」 そうめんをつるっとすすりながら、小黒は元気に答えてくれる。楽しかったようだ。无限大人とお父さんたちも昨日より打ち解けた様子で話していた。通訳なしでどうしていたんだろうと思ったら、お父さんが端末の音声通訳アプリでなんとかしていたらしい。便利なものがあるんだな。 「おじいちゃんがね、すごく詳しくてね、見たことない魚いっぱい教えてくれたよ」 「おじいちゃんは物知りだからね」 おじいちゃんは物静かだけれど、何かを教えてくれるときは饒舌になる。 「何匹か食べられる魚を釣ってきたから、夕飯に焼いてくれ」 お父さんがお母さんにクーラーボックスを渡すので、見ると新鮮な魚が詰まっていた。 「こんなに? 食べきれないわよ」 お母さんはその量を見て呆れ気味だ。 「私はこれとこれを釣った」 无限大人が指さした魚は大きかったり色鮮やかだったりして、その顔が誇らしげに見えて笑ってしまった。 「美味しそうですね。夕飯、楽しみです」 夕飯までは時間がある。その間何をしようかと考える。 「こちらの館に行ってみたい」 无限大人がそう言うので、お母さんに案内してもらうことにした。私は久しぶりに職場に顔を出すことになる。お母さんが館長に話をしたところ、ぜひ来てほしいと言ってもらえたので、そのまま向かうことになった。ここの館は街中にある。妖精たちは館の近くに用意されたマンションやアパートで暮らしていた。 「ここもその一件ですよ」 道すがら、お母さんが指さしたマンションはごく普通の建物だ。でも、住んでいるのは人になれない妖精たちだ。近くに同じく妖精が経営しているコンビニや食堂があるので、この界隈で生活が完結されている。 館の建物自体も、ごく普通のビルだ。 「ここに、君も通っていたのか」 「そうです。長い間お世話になりました」 まだ離れて少ししか経っていないから、あまり変わっていないけれど、そこの所属ではなくなったせいか、なんだか入るのをためらってしまった。 「久しぶりね!」 「お久しぶりです!」 けれど、迎えてくれたのは変わらない仲間たちの笑顔だった。 「向こうでの仕事はどう?」 「ちょっと雰囲気変わったね」 「元気そうだわ」 「うん。元気にやってるよ。今日は紹介したい人がいるの」 ひとしきり声を掛け合った後、後ろに控えていた无限大人と小黒を紹介した。 「こちら、无限大人と、小黒。小黒は妖精なんです」 「无限大人!?」 「えっ、本物!?」 その名前を聞いた瞬間、どよめきが起こった。 「あまり構えないでくれ。今日は見学させてもらいに来た」 无限大人は戸惑う彼らに手のひらを向けて、落ち着かせようとする。みんな、顔を見合わせて、緊張気味になってしまった。 「无限大人。ようこそ、よく来てくださいました」 そのとき館長が奥から現れて、无限大人を出迎えた。 「館長。お久しぶりです」 「久しぶりだね。向こうでも、よくやっているそうだね。話は聞いているよ」 「ありがとうございます」 「大人、よろしければ奥で話をいたしませんか」 「もちろん」 私も通訳としてついていくことになった。いったん仲間たちと別れて、館長について奥へ向かう。 「向こうの様子はどうですか。あと、例の計画は」 「うん。落ち着いているよ。計画は順調だ」 「計画?」 「君にも話してもいいだろう。衆生の門計画という」 无限大人は、その計画について概略を私に教えてくれた。まさか、館がそんなことを考えているとは知らず、驚いてしまった。 ← | → |