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夜は小黒が寝てしまってから、无限大人とお酒を飲んだ。 「それで、雨桐が笑うんですよ。もう、人の気も知らないで」 脈絡なく、仕事の話や最近あったことなどを聞いてもらう。 「彼女は正直な人だな」 「そういうところが付き合っていて気持ちいいんですけどね。ほんとに遠慮ないです」 「ははは」 无限大人の笑い声は耳に心地よく響く。 「彼氏さんも、そういうところが好きになったのかな。でも、よく強く言いすぎちゃって喧嘩するとか」 「気心が知れているから、本音が言えるのかもしれないな」 「そうですね……。本音を言い合って、ちゃんと受け止めて、喧嘩するのも日常のこと、みたいな、そういう付き合い方もいいですね」 私と无限大人は、意見がぶつかることがほとんどないから喧嘩という喧嘩をしたことがない。でも、本音を伝えているし、お互い遠慮しているわけではないと思う。 「意外とロマンチックな人で、夜景の見える素敵なレストランに行ったり、プレゼントを贈ったり、そういうことを欠かさない人だそうです。雨桐もそういうの喜ぶ人だから、お似合いなんだろうな」 「ロマンチックなことか」 「いろいろと雨桐の喜びそうなことを考えてやってくれるそうです」 「……君も、そういうことをされると嬉しい?」 「え? 私ですか?」 唐突にそんなことを聞かれて、目を瞬く。考えたことなかったかもしれない。ドラマや漫画のようなロマンチックなシチュエーションに憧れたことはあるけれど。でも、无限大人にしてほしい、なんて想像したことがなかった。だって、見つめられるだけで、微笑んでくれるだけで、名前を呼ばれるだけで、胸がときめいてしまうから。それ以上のこととなると、心臓がもたない気がする。 「いえいえ、いいなあとは思いますけど、してほしいとは思わないです」 「どうして?」 「だって、无限大人とは、こうして、お酒を飲んだり、お茶を飲んだり、一緒にいる時間があるだけで幸せだから……」 自分で言っていて照れてしまった。 「それになんだか、似合わないかなって気もします。そういうのは」 私たちには、私たちなりのやり方があると思う。 「そうだろうか」 「あんまり深く考えないでください。もう」 无限大人はなんだか納得できないような顔をしている。 「でも、あの、告白……してもらったときのことは、すごくロマンチックだったと思います……」 ふとそのときのことを思い出して、照れてしまう。まさか、空の上で聞くことになるとは思いもしなかった。だから余計に、印象深い思い出になっている。 「すごく……嬉しかったです」 「小香……」 「職場の人に見守られてたのは恥ずかしかったですけど……」 「すまない。その場で伝えたい衝動に駆られてしまって」 「ふふふ。びっくりしました。あのときが人生で一番幸せなときかも……」 「まだ始まりにすぎないよ」 ぽかぽかした気持ちで呟くと、无限大人はふと笑って顔を近づけてきた。ちゅ、と唇が重ねられて、離れる。 「これから、もっと幸せなときが来る」 「はい……」 「君を喜ばせたい。その気持ちはいつもあるから」 「私もです。无限大人に喜んで欲しいから」 手を握り、指を絡めた。そしてもう一度、キスをする。 「大好きです」 「私もだよ。小香」 无限大人は私の肩を抱き寄せて、耳元で囁く。 「私の小香」 「……っ」 ああ、今が一番幸せかもしれない。こうやって何度も、思いを伝え合って、与え合って、もっと幸せになっていく。これ以上なんて想像もつかないのに、いとも簡単にその時は訪れる。それだけ无限大人の愛情は深くて、果てがない。それを感じられることがとても嬉しい。溢れる思いが体温となって、触れ合った肌を通じて染み込んでいった。 ← | → |