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「今夜はハンバーグ作ろうか」 「ハンバーグ! 前食べたやつだよね。美味しかった!」 夕飯の献立を決めて二人に伝えると、小黒は立ち上がって喜んだ。 「じゃあ、買い物行こうか」 「うん!」 近所のスーパーに三人で出かけて、食材を買い込む。焼きたての饅頭が売られていて、二人がその匂いにつられるので、ご飯の後に食べようとそれも買った。 「お母さん、魚も安いよ」 その傍にあった魚売り場の店員さんに声を掛けられる。お母さんか、となんともいえない気持ちになった。 「今日は肉料理なので、また今度に」 「そうかい。きみ、お肉好きかい」 「うん! 好き! でも魚も好きだよ!」 「そうかそうか! 今度はお母さんに魚料理を作ってもらいな」 「小香はお母さんじゃないよ」 「おや? そうかい。それは失礼したね」 「ううん! でも美味しいごはん作ってくれるんだよ!」 小黒と店員さんのやりとりにどきりとする。小黒は気にせず、お菓子売り場の方に行こうとするのを无限大人に止められていた。小黒は妖精だから、もともと親というものはいない。でも、无限大人には子供のように甘えているように見える。私は、たぶんお母さんにはなれない。なる必要もきっとないだろう。ただ、こうして一緒にご飯を食べて、遊んで、同じ時間を過ごす、家族にはなれる。 きっとそれでいいんだと思う。 必要なものと、つい買ってしまったものを袋に詰めて、家に帰る。 「じゃあ、作りましょうか。まず手を洗って下さいね」 「はーい」 手をきれいに洗ってから、材料の下ごしらえをする。食材を切るのは无限大人にお願いした。やっぱり、私よりずっと綺麗に切ってくれる。食材をボールにまとめて、少しこねてみせてから、小黒にも小さなボールに分けて、こねてもらうことにした。 「んしょ、んしょ」 「そうそう、上手上手」 「餃子の餡みたいだね」 「そうだね」 しっかりとこねて、形を作る。小黒は小さな手で欲張って大きな塊を作っていた。その隣で、无限大人は売り物みたいにきれいに整った形を作っている。 「これぼくの!」 「うーん、こんなに大きいと火が通らないからなぁ」 「だめ?」 「无限大人くらいの大きさにできる?」 「むう」 小黒は残念そうにしながらも、師父に習って作りなおした。 「あとは焼くだけだね」 ここからは私の番だ。形を崩さないようフライパンに移して、焼いていく。 「いい匂いしてきた!」 「そそられるな」 ちょうどご飯も炊けたので、お皿を並べてもらって、一緒に作っていたスープとサラダを盛り付ける。 「はい、食べましょう」 「食べるとき、なんて言うんだっけ」 「いただきますだよ」 「いただきまーす!」 小黒はぱん、と手を合わせると、さっそくハンバーグにお箸をつける。无限大人も手を合わせてから、スープを飲んだ。 「ぼくの作ったハンバーグ、おいしい!」 「上手にできたね」 「小香がうまく焼いてくれたな」 「おいしいよ、小香!」 「ふふ、よかった」 正直、自分の腕前は最低限レシピ通りに作れる程度で、そこまで美味しく作れているとは思わないのだけれど、二人とも美味しい美味しいと食べてくれるから、前より料理に熱を入れて作るようになった。みんなで一緒に作るのも楽しくて、それだけで美味しくなる気がする。 無邪気に笑う小黒の姿にほっとする。いつも笑っていてほしい。幸せでいてほしい。改めてそう願った。 ← | → |