20.バトミントン

 翌日はよく晴れていたので、近くの公園に小黒と二人で出かけた。お店に立ち寄り、遊ぶ道具を買いに行くことにした。
「ボールがいいかな? あ、バトミントンもあるよ」
「バトミントン?」
「ラケットでこの羽を打つんだよ」
「へえー。やってみたい!」
 ボールとバトミントンを購入することにして、店を出る。公園にはたくさんの人が集まっていて、各々いろいろなことをしていた。
 開いている場所を探して草を踏みながら歩く。人のいないスペースを見付けて、敷物の上に荷物を下ろし、ボールを手に取った。
「何やる? サッカー?」
「サッカーやろう!」
 小黒にボールを渡すと、小黒は器用にドリブルを始めた。サッカーなんて、学生のとき以来だ。それほど運動が得意でもないので、小黒がパスしてくれたボールを受け取り損ねてしまった。
「ごめんごめん。取ってくるね」
 転がって行ってしまったボールを小走りで取りに行って、戻り、小黒の方に蹴ろうとしたらあさっての方向に飛んでいった。
「あっ、ごめーん!」
「小香、へたっぴだね!」
「あはは。ボール遊び久々だからなあ」
 ずばり言われてしまって苦笑いをする。ちゃんと小黒の遊び相手が務まるだろうか。不安が過ぎったけれど、何度かボールを蹴るうちに少しずつこつを掴んできて、最低限、小黒の方に蹴るのと、ちゃんと受け取ることがなんとかできるようになった。
「バトミントンやろ!」
 小黒はボール遊びに満足すると、荷物に駆け寄ってラケットを取り出した。バトミントン、昔に少しだけやった記憶があるけれど、ちゃんとできるだろうか。
「シャトルをこうやって打つんだよ」
 シャトルを宙に放り投げて、ラケットを振る。ネットの中央で羽を打ち、シャトルが飛んで地面に落ちた。
「これを落とさないように、打ち合うの」
「おっけー! やってみる!」
 小黒は気合十分で、ラケットを何度か振って感覚を掴む。シャトルを左手で持って、右手で下からラケットを振り、小黒の方へぽんと打ち上げた。小黒はシャトルをしっかり目で追いながら、後ろへ下がり、ばしんとシャトルを地面に叩きつけた。
「あれ?」
「ちょっと力が強いね。もう一回いくよ」
「うん!」
 もう一度シャトルを打ち上げると、今度は小黒はぽん、とシャトルを叩いた。シャトルは弧を描いて私の方へ戻ってくる。
「そうそう、上手上手!」
 シャトルをぽんと打ち返すと、小黒はまた同じように打ち返してくる。うまくラリーが続いた。少し力を入れすぎたり、逆に力が弱かったりして、シャトルがあらぬ方へ飛んでしまうこともあったけれど、少しずつ小黒は上達し、ちゃんと打ち返せるようになってきた。
「これ、楽しいね! 今度師父とやろっと」
「无限大人、バトミントンやったことあるかな?」
 もし初めてだとしても、きっとうまくやるだろう。そんなイメージがある。そろそろ12時なので、いったん休憩してお弁当を食べることにした。小黒はごくごくとお茶を飲んだ。
「からあげ、いっぱい作ってくれた?」
「約束したからね。はい」
「わあい!」
 小黒はぎっしり詰まったからあげに歓喜して両腕を上げた。こんなに喜んでもらえると、本当に作り甲斐があるというものだ。
「今日もいっぱい汗掻いたから、お風呂で綺麗にしないとね」
「ちぇ……。昨日入ったからいいじゃん」
 小黒は不服そうにしながらおにぎりを齧る。するとみるみる表情が輝いた。機嫌がころころ変わって、見ていて楽しい。
 お弁当を食べ終わったあとは、試合形式でバトミントンをやった。なかなか白熱して、私もつい頑張ってしまった。明日はきっと筋肉痛が待っているだろうけれど、身体を思い切り動かしてすっきりした。小黒も楽しんでくれて、无限大人のいない寂しさを少しでも紛らわせたならよかったと思った。

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