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テレビを消して、静かに端末のデジタル時計を見守る。三、二、一。 「新年好」 年が明けて、私と无限大人は向かい合って挨拶を交わした。外から、爆竹の音や、打ち上げ花火の華やかな音が聞こえてくる。これから、无限大人と過ごす一年が始まると思うと、わくわくしてくる。 「今年もよろしくお願いします」 「こちらこそ。これから、よろしく頼む」 その答えを聞くだけで、なんだかにやけてしまう。お酒が回っているというのもあるけれど、とても気分がいい。 「あ、そうだ! ちょっと待っていてください」 私は慌てて立ち上がり、寝室に向かう。小黒を起こさないように部屋を暗くしたまま手探りで机の上に置いておいた小箱を取り、背中に隠して无限大人の元へ戻った。 「実は、无限大人に渡したいものがあって」 「私に?」 「はい」 无限大人の前に立つと、无限大人も立ち上がって向かい合った。 「これ……です」 「開けても?」 「どうぞ」 恥ずかしくて全身がかっと熱を持ったけれど、もう後戻りはできない。无限大人が箱を開け、目を見開いたのを見つめる。 「これは」 「あの……。その石、ガーネットっていって、私の誕生石なんです」 事前に用意していた台詞がうまく思い出せなくて、咄嗟にそう伝えた。 「お守りとしても使われる石だそうで。だから、その……无限大人に持っていてほしいなって……」 言葉がうまく出てこなくて、しどろもどろにもごもごしてしまう。无限大人は指輪を大事そうな手つきで手に取ると、左手の薬指に嵌めてくれた。それを見ただけで、なんだか涙が出そうになる。 「ありがとう」 「……っ、ありがとうございます、受け取ってくれて……」 「君の気持ちだろう? とても嬉しいよ」 无限大人は私の手を握り、優しく、心を込めてそう言ってくれた。私は感極まってその手を握り返す。 「无限大人に指輪をもらって、とても嬉しかったんです。ずっと一緒にいるみたいに感じられて。いつでもその眼差しを思い出せるから……。だから、无限大人にも私を思い出してほしくて、指輪を贈りたいって思ったんです」 「いつでも君を想うよ」 「无限大人……」 じっと翡翠の瞳が私の瞳を覗き込む。瞼がゆっくりと下がり、少しずつ顔が近づいていく。唇が触れたとき、目尻から温かな涙が一筋零れた。 「……ふふ」 そっと唇を離したら、笑みが浮かんできた。嬉しくて幸せで、頬が緩んでしまう。大好きな人に、大好きな想いを伝えて、受け止めてもらえる幸せ。大好きな人が、私を大好きだと言ってくれて、愛を与えてくれる幸せ。 「では、そろそろ寝ようか。お酒、飲みすぎてないか?」 「大丈夫ですよ。ちゃんと起きれます。小黒の朝ご飯、準備しないとですから」 そのとき、ガチャっと音がして、寝室のドアから小黒が顔を出した。 「なんか、爆発した?」 眠そうに顔をしかめている小黒に、ちょっと无限大人から離れて、向き直る。 「お祝いの花火だよ。うるさかった?」 「もう年明けちゃったの?」 「ついさっきね」 「なんだ……。師父、小香、新年好」 「新年好」 「じゃあおやすみ」 小黒はぶすっとしたままそう言って、ふらふらと布団に戻っていった。完全に起きたわけじゃなくて、寝ぼけていたみたいだ。无限大人と顔を見合わせて、笑ってしまった。 「それじゃあ、私も寝ます」 「ああ。おやすみ」 「おやすみなさい」 静かに寝室に入ると、小黒は布団の中で丸くなって眠っていた。足音を立てないように歩いてベッドに向かい、布団に潜り込んだ。 ← | → |