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「ただいまー!」 无限大人との修行を終えて、小黒が玄関から駆け込んできた。 「おかえり。靴そろえて手洗ってきてね」 「靴そろえてるよ!」 「お、えらーい!」 小黒がぱたぱたと洗面台に駆け込んで、玄関を覗く。ドアを閉めている无限大人と目があった。その足元の靴は、確かにちゃんとそろえられている。誕生日プレゼントに贈ったものだ。 「ふふ。前までは毎回脱ぎ散らかしてたのに」 「この靴は大事に履いているよ」 无限大人は靴を脱いで小黒の靴の隣に並べ、スリッパに履き替える。 「无限大人も手、洗ってきてください」 「あ、うん」 そのままリビングに向かおうとするので、引き留める。无限大人は忘れてた、という顔をして洗面台に向かった。 「おやつ! おやつ!」 小黒はすでにテーブルに向かっていて、オレンジジュースをごくごくと飲んでいた。 「今日はパンケーキ焼いたよ」 「パンケーキ!」 二人が帰ってくる時間に合せて焼いておいた。まだ焼きたてほやほやだ。 「无限大人はコーヒー飲みますか?」 「うん」 電気ケトルのお湯をカップに注ぐ。私もコーヒーにすることにした。 「もうすぐクリスマスですね」 「クリスマスってなに?」 「あれ、知らない?」 「あまり馴染みはないな」 无限大人がそういうので、驚いた。街中はそろそろイルミネーションで飾られている。 「日本ではね、パーティをして、ケーキやご馳走を食べて、家族や恋人同士で一緒に過ごして、子供はサンタさんにプレゼントをもらうんだよ」 「へえ。サンタって誰?」 「白いひげに、赤い服のおじさん。空飛ぶ橇に乗って、トナカイに引かれて、世界中の子供たちにプレゼントを配るんだよ」 「空を飛ぶの? ……それって妖精?」 小黒は訝しむ。日本の子はサンタと聞けば目を輝かせるのに。なんだか新鮮な反応だった。 「ははは。妖精みたいなものかも。夜、子供たちが寝静まったあと、寝ている子供の枕元にプレゼントを置いてくれるの。だから、夜寝るときは今年もサンタさん来てくれるかなってどきどきして、朝起きて、枕元のプレゼントを見て、すごく嬉しくなったなあ」 「ふうん」 うまく想像できないのか、フォークを口に入れて小黒は小首を傾げる。 パンケーキを食べながら、无限大人は思い出したように言う。 「こちらでは確か、林檎を贈り合うんだったかな」 「そうなんですね。そういえば、ラッピングされた林檎が売ってたかも」 「パーティしてケーキ食べるって、誕生日みたいだね」 「そうだね。昔の人の誕生日を祝うのが起源だから」 「知らない人の誕生日を祝うの?」 「あはは。言っちゃえばそうかも」 「ふうん……」 小黒にはうまく伝わらなかったようだ。あまり興味を向けず、パンケーキの方に集中している。 「パーティ、やらない? うちで」 「またパーティやってくれるの?」 パーティと聞いて、小黒の耳がぴくりと動いた。 「やりたいな。无限大人はどうですか?」 「休みを取ろう」 「じゃあ、やりましょう!」 両手をぽんと合わせて、決定する。館で大人数でするパーティも楽しかったけど、三人でテーブルを囲むのもきっと楽しいと思う。 「美味しいケーキ、作りたいな。いいレシピ探してみよう」 うきうきしている私を見て、无限大人は目を細めて微笑んでいた。 ← | → |