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「すみません。もっと楽しいところにすればよかったですね」 「うん?」 コーヒーとケーキを頼んで、店員さんが下がったところで気になっていたことを伝える。无限大人は不思議そうな顔をした。 「楽しくないか?」 「いえ! 私は楽しいです! でも、无限大人は、こういうお店興味ないでしょう……?」 「そんなことはないよ。君がどういうものが好きなのか知れるから」 「そうですか……?」 そんなことを知ってどうなるのかよくわからなかったけれど、こういってくれるなら、これ以上何か言うことはできない。 「これも、君の好みに合うといいんだが」 そう言いながら、无限大人はポケットから箱を取り出した。そして、それを私の前へ置いた。 「開けてみて」 「はい……?」 なんだろう、と思って蓋を開けると、中には赤い髪留めが入っていた。 「え……? これ、は……?」 どうしてこんなものを无限大人が持っているのかわからなくて、訊ねる。 「任務先で見かけたんだ。君に似合うと思って」 「私に? え? ……ええ!?」 それはつまり、私にくれるということ? 私に似合うと思って? 「任務先でも、私のことを考えてくれたんですか?」 「そうだよ」 胸がいっぱいになってしまって、わけのわからないことを口走ってしまう。だって、そんな、この髪留めを、无限大人が私に? 「うそ、うれしい。うわ……うれしいです……」 それ以上は言葉にならなくて、ただただ髪留めに見惚れてしまう。嬉しすぎて、涙が出てきた。目頭に溜まったそれを指先で拭い、髪留めを手に取ってみる。手作りだろうか。素敵な細工だ。 「よければ、つけてみてくれないか」 「はい……!」 今つけている髪留めを外して、无限大人がくれたものをさっそくつける。後頭部で留めているので自分ではよく見えない。 「どうですか?」 「よかった。思っていた以上に、似合うよ」 「あっ、ありがとうございます……」 自分で聞いておいて、そう言われて照れてしまった。どうしよう。すごく嬉しい。さっきまでの心配が全部どこかへ吹き飛んでしまった。大好き。その思いが胸いっぱいに溢れてくる。无限大人のこと、大好きだ……。 「うれしいな……すごくうれしいです」 とにかくこの思いを伝えたくて口を開くけれど、それくらいしか言葉にならない。无限大人は優しく微笑んでくれていた。少しでも、伝わっただろうか。こんなに好きなのに、もっともっと気持ちは溢れてくる。どこまでも、限界なんてないみたいに。 任務先で立ち寄ったお店でこの髪留めを見て、私を思い出してプレゼントしようと思ってくれたなんて、なんて素敵なことだろう。嬉しすぎて、舞い上がってしまう。私の存在は、彼の中でもそれなりの立ち位置にあるのかと、そう自惚れてもいいんだろうか。誕生日や、何か理由があるわけでもなく、ただ、似合うと思って買ってくれた。こんなに嬉しいことはない。 「どうしよう、あ、何かお返しがしたいです」 膨らみ続ける思いをどうにかしたくて、そう考える。もらったのだから、お返しをしなくちゃ。 「気にしなくていいよ。私がしたくてしたことだから」 「でも、私も无限大人に何かプレゼントしたいです!」 そうだ。せっかくだから、何か形の残るものを。でも、无限大人ってどういうものが好みだろうか。 「何か、欲しいものってありますか?」 「欲しいものか」 聞いては見たけれど、无限大人ってあんまり物欲がなさそう。お金も持ってるだろうし、私がわざわざ買う意味のあるものってなんだろう。 「お店周りながら、欲しいもの決めておいてください」 「はは。わかったよ」 そうお願いして、私も考えてみることにした。 ← | → |