81.アルバム作り

 川に行ってから数週間後、小黒と无限大人がうちに来ることになった。カレーを作って待つことにする。煮込んでいる間にインターホンが鳴った。
「小香! 来たよ!」
 玄関を開けると、小黒が元気な笑顔で入ってきた。无限大人はその後ろに立って、笑みを浮かべている。
「お邪魔するよ」
「はい、来てくださってありがとうございます」
 さっそく二人をリビングに通して、テーブルの上に置いていたノートパソコンを開く。
「写真、思ったよりたくさんあって……。一人では選びきれないところでした。百枚くらいあると思います」
「たくさん撮ったね!」
「ふふ、たくさんおでかけしたものね」
 无限大人と小黒はノートパソコンを覗き込む。小黒は鼻をひくひくさせた。
「カレーだ!」
「作っておいたの。あとで食べようね」
「今食べたい……」
「あはは。お腹空いてるならおやつ食べる?」
「食べる!」
 小黒は元気に答えるので、お茶を淹れてお菓子を並べた。その間も、无限大人は楽しそうに写真をチェックしていた。
「本当に、いろいろなところに行ったな」
「そうですね。写真を撮らなかったこともあったから、もっと行ってますよね」
 この短い期間の間に、これだけいろいろなところを周れるとは思っていなかった。これも无限大人のおかげだ。
「最初のころは写真が少ないな」
「それは……こんなに出かけることになると思っていなかったから……」
 一緒にいるだけで緊張してしまっていて、写真を撮るどころではなかったのもある。今思えば、少しもったいなかった。本当に、あのとき勇気を出して食事に誘ってよかった。行動しなければ、うちに来てもらえるほどの仲になることは絶対になかっただろう。そうしたら、私は无限大人のことも、小黒のことも、どんなふうに笑うのか、何が好きなのか、すねたりすることもあることなんて、知らずに日本に帰っているところだった。知ったからこそ、単なる一目惚れではなくて、いろんなところを含めて好きだと思えるようになったんだ。苦しいこともあったけれど、この気持ちを抱けたことを、私はきっと後悔しない。
 三人で写真を見ていると、様々な記憶が蘇ってきた。動物園に行ったこと、小黒が泊ったこと、休みの日に会ったこと、漢服を来たこと、海に行ったこと……。无限大人と二人で出かけたこともそれなりにあった。北京、温州、近場で食事、ショッピングモール。今日も无限大人は腕輪を付けてくれている。私も、髪留めをつけていた。私が帰った後も、つけてくれるだろうかと思うと切ない気持ちになってしまった。いけない、今日は二人がいるのに、寂しい顔はしていられない。
「小香のお弁当、美味しかったなあ」
「そうだな。あれは美味かった」
「ふふ。よかったです」
 あれこれと思い出を話していると、写真選びはあまり進まなかったけれど、とても楽しかった。思い出を形に残しておけるって、すごく素敵だ。記憶は薄れてしまうけれど、きっと写真を見るたびに思い出すだろう。とても幸せな一年を過ごせたことを。
「この写真、よく撮れているな」
 无限大人は三人で映った写真を一枚指さした。三人ともいい笑顔で映っている。
「これ、表紙にしましょう」
 きっと一番よく撮れている写真だ。その画像を見失わないように、別の場所に保存しておくことにした。いろいろと話しながら残りの写真を見ていたら、外はいつの間にか暗くなっていた。

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