第三十話 贈



「ナマエ姉。聞いてほしいことがあるんだ」
 洛竹が真剣な声音でそう言うので、ナマエは手を止めて洛竹に向き直った。
「どうしたの? 改まって」
「実はさ……」
 洛竹はきゅっと唇を噛んで、思い切って言った。
「俺、紫羅蘭の店で働こうと思うんだ」
「まあ……」
 思ってもみなかったその言葉に、ナマエはなんと言っていいかわからず、口元を袖で覆った。洛竹はまっすぐな瞳でナマエを見ている。
「それは……人間の中で、働きたいということ?」
 ナマエは慎重に訊ねる。洛竹は迷わず頷いた。
「館にいると、なんか時間を持て余しちゃってさ。天虎やナマエ姉はいろんなことできるからいいけど、俺は特にやりたいことってないし……。紫羅蘭にそういうことを話したら、じゃあうちで働けばいいって誘ってくれたんだ」
 洛竹は笑みを零す。肩に力が入っておらず、自然体なことを見て取って、ナマエは関心した。洛竹は人間たちに敵対心も、恨みも持っていない。彼らと関わる仕事を厭うていない。むしろ、優しい洛竹の性格なら、うまく馴染めるだろうと思えた。
「そうなの。よかったわね。いいことだと思うわ」
「ほんと? そう思ってくれる?」
 ナマエが微笑み返すと、洛竹は急いで確認する。姉の反応がなにより気がかりだった。そんな洛竹にナマエはしっかりと頷いてやった。
「洛竹がやりたいと思って、自分で決めたことだもの。応援するわ」
「ありがとう、ナマエ姉……!」
 洛竹はナマエの両手をぎゅっと握って、にかっと笑った。それから、少しだけ眉を下げて付け加えた。
「あそこはさ、風息の樹のそばだから……。近くにいられるしな」
「……そうね」
 寂し気に言う洛竹に、ナマエもしんみりとする。
「きっと見守っていてくれるわ」
「……うん!」
 洛竹はさっそくその週から働き始めた。慣れるまではたいへんそうだったが、毎朝楽しそうに出かけて行った。人間社会でうまくやっていけている様子の洛竹に、ナマエは安堵の息を吐いた。今後、嫌なことも、やりきれないことも、たくさんあるだろう。だが、洛竹ならきっと乗り越えられる。紫羅蘭がうまく導いてくれることだろう。
 ある日、仕事から帰ってきた洛竹は花束を持っていた。
「じゃん! プレゼント!」
「まあ、きれい」
 洛竹はナマエにその花束を差し出した。色とりどりの花が、リボンでぎこちなくラッピングされている。
「フラワーアレンジメントっていうんだ。贈る人への気持ちを込めて、想いを色や花の種類で表すんだ。それで……これは、初めて作ったブーケ! ナマエ姉のイメージで作ってみたんだ」
「私の? 嬉しいわ」
 ナマエは改めて花束を眺める。そこに洛竹の、ナマエへ向けた思いが込められていると思うと不思議と胸に響いてきた。
「とても素敵ね」
「まだあんまりうまくできてないけどな。これからいっぱい練習する!」
 洛竹はもう一つのブーケを、これは天虎の! と天虎に渡した。天虎もとても喜んでそのブーケを受け取った。
「花瓶も持ってきたから飾るな。水につけて置くとしばらくは保つんだ」
「そうなの」
 洛竹はてきぱきとブーケを解き、水切りをして、花瓶に挿していく。せっかくのブーケを解いてしまうのはもったいなかったが、卓子の上に飾られると、部屋の中がぱっと明るくなったようで、これも素敵だとナマエはすぐに気に入った。
「森を思い出す……」
 天虎はすんすんと花の香りを嗅ぎながら、ぽつりとそう漏らした。館にはだいぶ慣れたが、やはり自然が恋しい思いは変わらない。ナマエはそっと天虎の肩に手を添えた。天虎はじっと花を見つめていた。
「最近は、花の名前もだいぶ覚えたんだ。それから、花言葉っていうのも」
「花言葉?」
 耳慣れない言葉に、ナマエは意味を訊ねる。洛竹は例えばこれ、と一輪の花をとってみせた。
「カンパニュラって花なんだけど、花言葉は”感謝”とか”思いを告げる”っていうんだ。つまり、この花を選んだのは、日頃の感謝の気持ちを込めてっていうこと」
「選ぶ花によって自分の気持ちを伝えられるのね」
「うん。そう。そういえば、この花を選んで買っていった男の人がいたんだけど」
 洛竹は花を花瓶に戻し、そのときのことを思い出すように上の方へ視線を向けた。
「好きな人に、告白するんだって」
「告白?」
「うん。紫羅蘭に聞いたんだけど、人間がつがいになってほしい相手に、好きです、俺と一緒になってくださいって伝えることを告白って言うらしいよ」
「そうなの」
「すごく緊張した様子だったなあ。告白、うまくいったらいいなって思った」
「そうね」
 ナマエは相槌を打ちながら、想像してみる。
 人間の男性が、緊張した面持ちで青い花束を持ち、女性に告白する。女性は美しい花に顔を綻ばせ、喜んで受け取るだろうか。
 ――あなたのことが好きだから。
 ふと、その青い花束を持っている男の顔が無限に変わった。ナマエは受け取る側だ。
 ――違う、違う。
 ナマエは首を振ってその想像を打ち消す。無限の言葉は、告白というものとは違う。ただ好意を示してくれたのだ。それは自分の存在を肯定されたような、足元にある地面が確かなものであると教えてもらえたような、そんな安心感を与えられるものだった。初めは真意がわからず戸惑ったが、そう思い至ると、ただただ嬉しい思いが湧き上がった。だから、その嬉しさを伝えたくて、ナマエも思いを伝えたのだが……。
「無限様、お元気かしら……」
「え、無限、なんかあったの?」
 ぽつりとナマエが心配げに呟くと、洛竹は目を丸くした。
「この間お会いした時、少し体調が悪そうだったの」
「へえ、壮漢得病かな」
 小黒に手を引かれていた姿は、いつになく弱弱しかった。ナマエは頬に手を添えて、その後ろ姿を思い出し、落ち着かない気持ちになった。
「今度お見舞いに行こうかしら」
「それなら、花を持っていく? 人間は見舞いに花を持っていくんだって」
「それはいいわね」
 洛竹の提案に、ナマエは手を打った。洛竹に花束をもらったとき、とても嬉しかった。無限にも、同じように喜んでもらえたら嬉しい。
「明日、お店に行ってもいい?」
「うん。一緒に行こう。帰りは天虎に任せてもいいか?」
「うん」
 洛竹にナマエの護衛を頼まれて、天虎は力強く頷いた。人に見られないように気を付ける必要があるが、ナマエをひとりにするわけにはいかない。
 弟たちの頼もしさが嬉しくて、ナマエは頬を緩めた。

「いらっしゃいませ!」
 紫羅蘭はとびっきりの笑顔でナマエを迎えてくれた。
「ナマエさんに来てもらえてとっても嬉しいです! 素敵なブーケ、作りますね!」
「ありがとう、紫羅蘭。どんな花があるのかしら」
「そうですね。例えば……」
 紫羅蘭は目に付いた花をひとつひとつナマエに説明する。洛竹は横で一生懸命メモをとっていた。
「無限様は大地のように落ち着いた人だから、花も明るすぎず、可愛すぎず、落ち着いたものがいいですよね。シックなモーブ系のカラーでまとめて、枝とか実を取り入れてもいいかもしれません」
 何本か花を抜いては束にして、ナマエにこんな印象になりますと教えてくれる。ナマエは真剣に確認しながら、どんな花が無限に似合うだろうと考えてみた。
「白い木蓮の花言葉は高潔な心なんです! 無限様にぴったりじゃありませんか?」
「とても素敵ね! じゃあ、それと……」
「うふふ。それから、こっちの花はラナンキュラスといって、黄色だと優しい心遣い、ピンクだと飾らない美しさって意味になります」
「色でも意味が変わるのね」
「どっちも無限様らしいですよね……!」
「ええ、とてもいいと思う!」
 紫羅蘭と、無限について語るのはとても楽しかった。紫羅蘭も無限に助けられて館に来たと話していた。同じ経験をした者同士、話が弾む。洛竹は盛り上がる二人からやや離れて、掃除や花の手入れを始めた。
 紫羅蘭にアイデアを出してもらい、出来上がったブーケは想像以上に美しかった。
 ナマエは紫羅蘭の手でラッピングされていく花を見つめ、これを見たときの無限の顔を想像する。喜んでくれたら、とても嬉しい。
 こんな仕事を、紫羅蘭は、そして洛竹はしているのだと、ナマエは改めてその凄さを肌身で感じた。花は人を笑顔にすると言っていたが、贈る人も、贈られる人も、笑顔にできる素晴らしい仕事だ。
 洛竹にぴったりの仕事だと思える。花が出来上がるまで、こっそり洛竹の様子を眺めていたが、忙しそうに働く姿は活き活きとしていて、いままで知っていた洛竹とはまた違う顔をしていた。
「はい、できました!」
 紫羅蘭は包んだ花をナマエに満面の笑みで差し出した。
「無限様が早くよくなるようにって、私も思いを込めさせていただきました」
「ありがとう。伝えるわね」
「はい! よろしくお願いします」
「もっと話していたいけれど、天虎を待たせているからもう行くわね」
「ええ。またお休みの日にお出かけしましょう!」
 紫羅蘭とそう約束をして、洛竹を振り返る。
「洛竹。それじゃあ、帰るわね」
「うん。気をつけてな! 無限によろしく!」
「ええ」
 ナマエは大切に花束を抱えて、店を後にし、天虎と合流して館に帰った。切り花は鮮度に気を配らなければいけない。ナマエはさっそく無限を訪れることにした。
 無限の部屋の前まで行って、戸を叩く前に髪が崩れていないか気になり、片手でちょっと整える。疲れた顔をしていないだろうか。頬も軽くほぐして、呼吸を正した。
 こんこん、と叩くと、中から歩く音がし、戸が開かれた。
「無限様」
「ナマエ」
 戸を開けたのは無限だった。無限はナマエの姿を見て、驚いたように目を見開く。ナマエは頭を下げて挨拶をし、無限の顔色を窺った。
「お休みのところすみません。その後、体調はいかがですか?」
「あ……ああ。問題ない」
 無限は戸惑った様子のままそう答え、あ、と気付くと身体を端に避け、中を示した。
「立ち話ですまない。どうぞ」
「いえ、ここで」
「お茶を振る舞う」
「では……失礼いたします」
 花を渡してすぐに帰るつもりだったが、無限に中へ促されたら断ることも悪いようで、ナマエは中へ入った。
 無限はナマエを座らせると、お茶を、と言って厨に行ってしまった。ナマエは花を持ったまま部屋を見渡したが、小黒はいなかった。
 無限がお茶を持って戻ってきたが、ナマエの分だけ茶を注ぎ、なかなか座る気配がない。なのでナマエは茶に手をつける前に立ち上がり、無限に花を差し出した。
「人は、お見舞いに花を贈ると教えてもらいましたの。これは、私から無限様に」
「花を?」
 無限は不思議そうな声を上げて、まだよく状況を理解していないような様子でブーケを受け取った。ナマエはじっと無限の顔を見つめる。無限は花を見下ろし、視線を彷徨わせ、ナマエを見上げた。
「これは……?」
「以前お会いした時に、体調が悪いようでしたので。今は、いかが……?」
「ああ、いや」
 無限は言葉を探すように視線を彷徨わせ、また花を見下ろした。
「これを、あなたが?」
「紫羅蘭のお店をご存知でしょう? 今朝、包んでいただきましたの」
「私に?」
「はい。紫羅蘭も洛竹も心配しておりました。その、花の種類を、私は知らなかったのですけれど……。紫羅蘭に教えてもらって」
 ナマエはひとつひとつ、花言葉を無限に伝えた。
「無限様にぴったりだと思って、選びましたの。相手を想って花を選ぶ人の好意は素敵ですわね。私、昨日洛竹に初めて作ったブーケをもらいました。とても嬉しかった。だから、無限様のお気持ちも少しでも和めばと……」
 ナマエの説明を呆然と聞いていた無限は、そうか、と呟いて椅子に腰を下ろし、手の中の花を眺めた。ナマエも座り、お茶を一口飲んで、花を見つめる無限の様子を窺った。
「お顔の色は悪くなさそうですわ。ご気分は?」
「ああ。いいよ」
 無限は目を閉じ、深呼吸をした。
「とてもいい」
 無限の手元から、ナマエの方にまで花の香りが香ってくる。
 無限は目を開け、ナマエに向けると、微笑んだ。
「あなたのお陰だ」
「それなら……よかったですわ」
 ナマエは急に気恥ずかしくなって、袖で口元を隠した。
 不意に向けられる無限の視線はあまりにまっすぐで、見返すことが難しい。
「あ、あの、花瓶も用意してありますの。生け方も習っておりますから、飾らせていただいても?」
「助かるよ」
 ナマエは立ち上がると、無限に手を差し出した。無限が花束をナマエの手に乗せるとき、指先が触れ合った。
 ナマエはそっとブーケを開いて、教わった通り水切りし、花瓶に霊質で水を満たして、花を挿した。
 見栄えがいいように見よう見まねで花の位置や向きを調節し、卓子の中央に飾る。ブーケのときとはまた違った印象になった。
「綺麗だ」
 その様子を見守っていた無限は完成した花瓶を見て笑みを零した。
 この笑みが見たかった、とナマエは胸がいっぱいになるのを感じた。ずっと気に掛かっていたのだ。あのときの苦しそうな表情が。
 本人の言葉通り、調子が戻ってきているようだ。
 やはりこの人が好きだ、とナマエは思う。
 木蓮の白さのように潔白で、凛として、美しい人。
 花を見つめる無限の伏せた瞳の優しさを見ていると、胸の奥がきゅん、と締め付けられるようだった。
「洛竹は、紫羅蘭の店で働き始めたのか」
 その問いかけにはっとして意識が引き戻された。
「あ、はい。とても楽しんでいるようですわ」
「それなら、よかった」
 無限は自分の茶杯にお茶を注ぎ、一口飲んだ。
「彼は、あの事件のとき、逃げはしたが戦おうとはしなかったそうだ」
「……ええ」
「優しい子なんだろう」
「はい。とても」
 ナマエは誇らしさを感じながら、頷いた。
「天虎はどうしている?」
「お料理をしていますわ。いろいろな調味料の使い方を覚えて、研究しているようです」
「館は窮屈ではないかな」
「そうですわね……。いまのところ、不便は感じていないようですが」
 ナマエは窓の外へ視線を向ける。花を見て、森を思い出すと呟いた声が耳の奥に響いた。
 お茶を何杯か飲む間他愛無い話をして、ナマエは椅子を立った。
「それでは、そろそろ」
「うん」
 無限も立ち上がり、ナマエを戸口まで送った。
「花を、ありがとう」
「気に入っていただけたなら、なによりですわ」
「とても」
 そう言う無限の笑顔は穏やかで、どこまでも澄み切っている。その視線に見つめられて、ナマエはどぎまぎしてしまい、目を伏せた。
「その……では、また」
「ああ。また」
 ナマエは名残惜しい気持ちを引きはがすように足を踏み出し、部屋を出た。
 無限の元気な様子を見れてよかった。しかし、なんだか胸が苦しいような気がする。無限の笑顔を見てから、ずっとおかしいのだ。
 微かな違和感を抱きながら、ナマエは自室へと戻った。
 


 天虎が森に帰ると言い出したのは、それからしばらく経ってのことだった。
「天虎、なんでだよ」
 洛竹は驚いて天虎に問いかける。天虎は言葉少なに、俯いた。
「天虎、でも、寂しいわ」
 ナマエはつい天虎を引き留めるようなことを口にした。
「ここで一緒に暮らすのではだめかしら」
 姉として、天虎の思いを尊重してやりたいのはやまやまだが、外は霊質が豊かとは言えないし、どこに行っても人間に見つかる可能性がある。天虎一人で行かせるのはとても心配だった。
 しかし、天虎はすでに心に決めていたようで、ナマエの手を握り、じっとその目を見つめた。ナマエは固い意志を伝えてくる天虎の瞳を見つめ返し、切なさに胸が疼いた。
「みんなで一緒にいたらいいじゃないか。なあ。ナマエ姉を悲しませることないだろ」
 洛竹は一生懸命そう言い、天虎の肩に手を回す。しかし、天虎は答えない。
 ナマエはなんとか説得する言葉を探したが、その瞳を揺らす力を持つ言葉は見つけられなかった。ナマエは諦めて息を吐き、それなら、と天虎の目を覗き込む。
「それなら、たまには帰ってきてくれる?」
「うん」
「危ないことがあったら、すぐに言うのよ」
「うん」
「私がいつでもここであなたのことを思っていること、忘れないでちょうだいね」
「うん……」
 天虎は少しだけ寂しそうに瞳を伏せたが、それでも考えは変わらなかった。ナマエたち姉兄の傍にいたいのはもちろん本心だ。館の暮らしは便利だし、様々な料理をするのも楽しい。だが、森でけものたちと駆け回り、魚を釣り、のんびりと時の移り変わりを眺めているあの場所こそが、自分の居場所だと感じていた。
 天虎はそっとナマエの手を離した。温もりの失われた指先を、ナマエはきゅ、と握り込む。
「じゃあ」
「いってらっしゃい、天虎」
 天虎はもう一度だけナマエと洛竹を振り返り、意を決したように背を向けると、館を出ていった。
 天虎が行った先をいつまでも見ているナマエの肩に、洛竹が手を置いた。
「寂しいな……」
「ええ……」
 二人でそうしてしばらく寄り添っていた。
 洛竹は昼間出かけているので、ナマエはひとりで過ごすことが多くなった。弟たちが戻ってくる前に戻ってしまったかのようだ。
 しかし、二人とも自分で決めたことだ。
 姉としてできることは、その意志を尊重してやることだとナマエは自分に言い聞かせる。
 冷え込む朝には、出ていった天虎のことを思った。いまごろ寒い思いをしていないだろうか。そばにいてやりたいが、ナマエも館に留まることを選んだ以上、別れは避けようのないことだった。
 弟たちと、思いは一緒だと思っていた。でも、違った。
 もしかしたら、もう、それぞれの道は別れ始めているのかもしれない。そう考えるのは苦しいことだった。
 無限とともに館に行くことを決めたあのとき、ナマエ自身弟たちと違う決断をした。
 妖精はひとりで生まれ、ひとりで生きる。
 だからこそ寄り集まった縁に家族という名をつけ、関係を強固にし、同じ場所で一緒に暮らすことを、とても重要視してきた。その縁の中心にあって、みなをひとつにまとめていた存在はもういない。
 ナマエだけの力では、もうまとめきれないのかと、無力さを痛感する。
 たとえ家族がばらばらになることがあっても、いつでも自分が彼らの帰る場所でありたい。ナマエはそう願わずにはいられなかった。


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