お姉さんとアイチくん10




「はろーみっさき!」
「アイツなら奥にいるわよ」
「ありがとー!」
「ゆりかさん! こんにちは!」
 ゆりかさんの声が聞こえて僕は一目散にカードキャピタルのカウンターに馳せ参じた。
「やっほ、アイチくん。お迎えご苦労!」
「聞いてください! 今、森川くんとファイトしてたんですけど」
「二人共、うるさい。店で騒ぐな」
「あっ、ごめんなさいミサキさん」
「はいはーい。向こう行こ、アイチ」
 じとっとしたミサキさんの視線をよけつつ、僕たちは手を繋いで店の奥へ退散した。
「森川くん井崎くん、やっほー」
「はっ、アイチの彼女!」
「ど、どうも〜」
 緊張して挨拶を返す森川くんと井崎くんに一瞬むっとしたけど、それよりもゆりかさんに僕の話を聞いて欲しい。
 ゆりかさんを座らせて、僕はその隣に座る。
「今日、僕ね」
「うんうん」
 握ったままの手をテーブルの下に隠して、僕たちは話をする。
 にこにこと話を聞いてくれるゆりかさんがとても優しくて、僕は普段以上に饒舌になる。
 あとから櫂くんと三和くんが来て、ファイトを始める。
 ゆりかさんは観戦したり、ミサキさんのところに行ったり。
 そろそろルールは覚えたから、ファイトを始めたいんだって。
 デッキ作りはミサキさんがアドバイスするけど、初ファイトは僕とする、そう約束した。
 ゆりかさんにうまく教えられるように、ファイトって楽しいんだって、もっとやりたいって思ってもらえるように、心を込めてファイトしよう。
 そしていつか、ゆりかさんと……。

 その日が待ち遠しくて、楽しみだ。

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