策士の一撃 [ 28/37 ]



 エルザとマナミアはザングルグの側近の一人と戦っていた。

「エルザ、マナミア。待たせたね!」

 私達は二人に駆け寄って、でも再会を喜ぶ暇はなく、剣を構える。

「思ったより早かったね」
「本当。元気そうで何よりですわ。ルナ」

 マナミアと微笑み合って、エルザの補佐に回る。その間に、ユーリスとマナミアが詠唱を開始。
 けど、ゼーファのバリアは強力で、なかなかダメージが通らない。
 それでもユーリスは途切れずに炎を打ち続けた。
 ユーリスの重ねた炎が、とうとうゼーファのバリアを打ち破る。すかさずエルザが飛び込んで、ゼーファの動きを阻止した。

「今だ、ユーリス!」

 ユーリスは両手を掲げ、トドメの一撃を放った。

「くらえっ!」
「笑止! 私にかような魔法が効くと思うたか!」

 ゼーファは寸前でバリアを再生した。ユーリスの放った炎はゼーファに当たる寸前に、掻き消える。ところが、炎に紛れて放たれたダガーが、ゼーファの胸に突き刺さった。
 魔法のバリアでは、実態のあるものは防げない。

「残念でした、ってね」

 ゼーファはもう動けなかった。

「ユーリス、どんどん強くなってる」
「寂しそうですわね、ルナ」

 ぽつりと呟いたら、側にいたマナミアがそっと私の肩に触れた。
 さっき二人で進んでいたときも、ユーリスは短くなった詠唱と、正確無比な照準で、確実に敵の数を減らしていっていた。
 私はユーリスに助けられることが多かったくらい。

「助かったよ」
 
 ゼーファの身体が消え、残されたダガーを拾おうとしたユーリスに、エルザが声を掛ける。エルザも、この戦いでユーリスがどんなに頼もしくなったか感じたんだ。
 以前のユーリスなら、ダガーを魔法に仕込むなんて思いつかなかったかも。それに。

「借りができちゃったな」
「そんなこと気にするなよ。助けあうのは当たり前だ。僕は君の……仲間だろ」

 こんなふうに、素直なことを言うのも。
 エルザとユーリスのやりとりを遠くで眺めている私に、マナミアは忍び笑いを漏らす。

「やっぱり寂しそう、ルナ」
「そんなことないよ、ユーリスが変わって、嬉しいよ」
「そうですわ、ルナ。どんなに変わっても、ユーリスはあなたのそばにいますもの。それだけは絶対に変わりませんわ。ね?」
「え? あ、うん。そうだね?」

 マナミアは私の両手をきゅっと握って、なんだかとても嬉しそうに笑った。マナミアが私の何を見て寂しそうだと感じて、何がどうなってこんなに嬉しそうなのか、どうもよくわからないけどとりあえず頷いた。

「ユーリス危ない!」

 そのとき、ガラガラと壁が崩れる音がして、瓦礫の下敷きになりそうだったユーリスを、エルザが救いだした。
 ユーリスはバツが悪そうに、だけど率直に、エルザにあるがとうと言った。

「助けて、助けられて」
「いいコンビですわね」

 私達はそう言って、笑い合った。

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