LION(仮)
歓楽街の路地裏。

たった今、夜の世界の辛酸を舐め、地に伏す獣が一匹。


表の通りにきらめくネオンの明かりを透かして、獣の髪は眩い金色に光る。

仕事上のトラブルか、八つ当たりか、はたまた制裁か。

獣の体は痣だらけで、出血も目立つ。

右腕を庇うように、痣だらけの体を起こそうとするがしかし、途中で膝がくず折れてしまった。

「ぃっ、てぇ…」

低く唸るようにのどを震わせ、再びコンクリートに伏す。

自力で立てるほど、体力が回復していないので、動けるようになるまで休んでいようと獣はそのまま目を閉じた。

獣は気づいていなかったが、頭に、かなり致命的な打撃を受けていた。

とめどなく出血する、後頭部の傷。

体力を回復する、という段階では最早なかった。



路地裏に横たわる、瀕死の獣。



その姿は、表通りから見えないわけではないのに、誰もが素通りしてゆく。

むしろ、関わり合いたくないとばかりに足早に避けられていた。


―今、ここで、死んだら。


獣は、薄れゆく意識の中で思考した。


―悲しんでくれるヤツはいるだろうか?


答えの出る前に、獣は。



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