月は満ちたり、想いのように

『あなたを想って満ちる心
漆黒を彩る月のように

空が不誠実だというなら
わたしは月になりたい

毎夜満ちていく想いを
輝きに変えることができるから』

何気なく口ずさんだ旋律に扉の方から拍手があって、イオルは驚いて窓の反対側を振り返った。

「その歌を聴く限り、わたしはまだ愛想を尽かされてはいないようだ」

ゆっくりと窓際に近づいてきて、イオルの赤みがかった金の髪を梳くフィウゼーヌ。

貴族らしい上品な口髭には白髪が混じって渋みある色気を醸し出している。

「おかえりなさいませ。フィウゼーヌ様」

イオルも伸ばされた手に応えて、瞼を閉じて笑みを浮かべた。

「待たせてすまなかった。どうしても行かなければならなくて」

「いいえ。いいんです。急いで戻ってきてくれたのでしょう?」

申し訳なさそうに眉を下げたフィウゼーヌの額に残る汗を確かめて、手を伸ばすイオル。

「ほら。こんなに汗が・・・」

「怨まれては大変だからな。急いで戻ってきたんだ」

「そういう時は早く会いたかったから、と言うんですよ」

クスクスと笑いながらテーブルの横のソファに二人で腰掛ける。

一人用のソファだったので、自然とフィウゼーヌの膝の上にイオルが乗った。

ハープをテーブルの上に置き、イオルは体の向きを変えてフィウゼーヌの首に腕を回した。

「いつまででも待っているつもりでいましたよ」

言いながら甘えるように擦り寄ってくるイオルにフィウゼーヌは唇を寄せる。

何度も柔らかい下唇を食んで、イオルは自分から舌出してフィウゼーヌの口内に絡めた。

「・・・ん、ーふ・・・ァっ・・・は、あ」

くちゅくちゅと舌を動かして、唇の隙間で熱を持った吐息を交える。

ふと、フィウゼーヌは笑って唇を離した。
名残惜しそうに濡れた唇を舐めるイオルに、身体の奥でじわりと動き出す欲望。

「口付けが上手くなったな。イオル」

ん?と問うように額と額をつけて、下肢に手を伸ばした。

「そんな、ーーあっ・・・!」

膨らんでいる衣の上をやんわりと撫でて、腰を持ち上げるように陰部を擦り合わせると、イオルの口から淫らな声が漏れる。




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