雷鳴

話が違う、と止めようとするヴィルの手をオルヴァは振り払う。

『複数相手に身体を開くより、決まった相手にだけ身を捧げる方がはるかに良いだろう?それが、この国で最も高貴な人物となれば、尚更』

嘲笑うようにそう吐き捨て、ヴィルの前から姿を消した。



「わたしは…、オルヴァ様が、恐ろしかったんだ…、だから、止めることができずに、そのまま…っ、…」

色のない指先でくしゃりと銀の髪を掴み、ヴィルは尚も落涙する。

そんなヴィルを慰めようと、ディノはゆっくりと口を開いた。

「こういった言い方があまり好ましくないとは分かっていますが…それが、エルティシアンの運命、では?」

エルティシアンの魔力は皆無に近い。

その上体格や腕力、体力もオズランデの民より劣るのだ。

そんな風に最もか弱い種族であるにも関わらず、今も滅んでいないのはその身を捧げる代わりに、貴族や王族に守られてきたからに他ならない。

「身体を捧げるという行為は、まだ幼い少年にとっては確かに過酷なのかもしれません。けれど万が一、国王陛下の寵愛を受けられれば―」

ヴィルの鋭い眼差しがディノを捉えて、言葉の続きを遮る。

「本気で、そんなことを言っているのか?…貴族や王族にとって、エルティシアンの少年など、ただの愛玩具じゃないか!!」

肩を震わせ、声を嗄らして。

「わたしは…っ、それを知っていながら、オルヴァ様に連れて行かれる少年を、黙って、見ているだけ、だったんだ…っ!!」

エルティシアンの少年の未来を案じる、心優しいヴィルシュア。



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