氷食む獣

直接触れるその肌は、鳥肌が立つほど滑らかに指に溶ける。
ヴァルアンの熱を分け与えるように五指を広げて、白いばかりの胸を撫でれば、吸いつくように手のひらになじんだ。

ただ、肌に触れただけでこれほどの熱が体の内に集まる感覚をヴァルアンは未だかつて味わった事がない。

欲を煽る美酒や、頭の芯を霞ませる香の薫り。
絹の衣も、錦の夜具もアイラの必要とするところではない。

ただ、その身ひとつあれば、求める者を至上へと導くことができるのだ。


熱を移されて、氷のような肌がヴァルアンの手に溶けてなじむ。
その手の下で、珊瑚の色をした胸の飾りが存在を主張し始めていた。



――肌に触れれば、それだけでどんな堅物も正気を失う。



『氷のアイレニール』について、そんな噂を聞いた事があったのを思い出す。
ヴァルアンはそれを信じてはいなかったし、気にもとめていなかったのだ。
だから、今の今まで忘れていた。

手になじむその白の柔らかさに、唐突にその記憶が呼び起こされた。

夢中になって、知らず知らずのうちに両の手のひらで肌を撫で珊瑚の飾りを摘む。

「ん、ぁ、あっ…」

漏れる嬌声にふとアイラの顔を見れば、濡れた瑠璃にえもいわれぬ快感の色を湛えてこちらを見つめている。

視線が絡んだ瞬間、口の端を緩やかに上げて、またしても落ち着いた声音がした。

「ヴァルアン様、どうされました?…僕の体はお気に召しませんか?」

少しもそんな風には思っていないだろう。
自信たっぷりといった調子で、小鹿のような脚をヴァルアンの腰のあたりに擦りつけてくる。

「驚いていたのだ」

言いながら腰に擦り寄せられた脚へ右手を這わせる。

「ん、…何にですか?」

目を細めて、気持ち良さそうに息をはくアイラ。
その反応に気を良くして、脚を撫でやすいようにヴァルアンは身体を少し下へずらした。

手の甲を脚に触れさせ、付け根から膝のあたりまでをゆっくりと撫であげる。

「あ、……はっ」

返す手のひらで内腿をなぞれば、両脚の付け根の内にある露わな花蕊がふるりと揺れて頭をもたげた。

「これほど手触りの良い肌があろうとは…夢にも思わなかった」

驚きを口にするヴァルアンの呼気もアイラと同じに、いや、それ以上に乱れていた。

「お気に召していただけたのなら、良かった」

そう言って嬉しそうに笑みながら、上体を起こし白い顔を近づけてくる。
焦らすような、唇が触れるか触れないかの距離での囁き。

「ヴァルアン様…」

腕をヴァルアンの首にまわして、瑠璃の瞳を細める。



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