ROSE of YELLOW

火にかけたフライパンの中で、オリーブオイルとにんにく、唐辛子がパチパチと音を立てて踊っている。

いい香りだ。

にんにくが焦げないうちに少し固めに茹でたパスタと茹で汁をフライパンに加えて、煽りながらよく混ぜる。

好きな人の為に作る料理は、なぜこんなにも楽しいのだろう。

鼻唄を歌いながらできあがったペペロンチーノを皿に移し、テーブルへ。

ワイングラスも並べて、夕食の準備は完璧。

今日も、いい出来だ。

早速、誉さんを呼びに寝室へと向かう。

仕事が少し残ってるけど、ごはんができたら呼んでね、と申し訳なさそうに微笑った誉さんの顔を思い出し、勢いよく寝室のドアを開けた。

「ほーまーれさんっ!!メシでき……」

笑顔で迎えてくれると思っていた誉さんはしかし、電話をしている最中だった。

「はい…はい…じゃあ予算はそのくらいで、どんなものができるか明日また連絡を……」

人差し指をたて、話す口元にあてる。

無言で、『静かに』と。

その顔は俺の近づけない、誉さんの顔だった。

仕事中の、オトナの顔。

時折笑いながら、電話の相手と話すものだから少し腹立たしくなって、ドアを開けたまま、誉さんに背を向けた。

食卓のイスに腰かけ、頬杖をついて待つ。


五分もせずに、電話を終えた誉さんが部屋から出てきた。

急いで俺の向かいに座りながら、口を開く誉さん。

「ごめんね。注文が入ったんだ」

「…携帯にかかってくるの珍しくない?」

わざと不機嫌そうな声で、子供のように口をとがらせて言う。

「市場の人なんだ。知り合いのお祝いに花束を贈りたいって…急だったから携帯にかけてきたんじゃないかな?」

「ふぅん…」

自分から尋ねたくせに、無関心な返事をしてフォークを手に取った。





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