はなのひ

八月四日

くもり


今、僕は恋人の家にいる。

ふたりで仲良くキッチンに立って夕食を作っている所だ。

今日のメニューはグラタンと野菜たっぷりのコンソメスープ。

「ねぇ、明日花火大会行けるんだよね?」

僕はスープに入れる人参を切りながら、彼の顔も見ずに問いかけた。

「仕事が早く終わればね」

グラタンを焼くために電子レンジのボタンを押しながら彼は答える。

僕は人参を切り終えて、玉ねぎにとりかかった。

「ふぅん…早く終わりそう?」

玉ねぎを切ったら目にしみて、涙をこぼしながら言う。

彼は泣いている僕を見て、勘違いしたのか焦って返事をした。

「早く終わらせるように努力するよ」

早口でそう言い、僕の手元見て。

「…玉ねぎ?」

と、小さく呟いた。

玉ねぎのおかげで明日はふたりで一緒に花火大会に行けそうだ。

そう思うと、少し失敗してしまったグラタンも美味しく感じられた。



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