Humming bird

白いシーツの波は雲のよう。
歌う君は可愛い小鳥のよう。




優しいメロディーで眼を覚ました。
瞼の裏には光が踊って、朝なのだと分かる。

隣で鼻歌を歌う恋人に起きている事を悟られないように眼を閉じたまま世界を感じる。
視界が遮られているので、その可能性は無限。


ゆったりとしたメロディーに合わせて僕の髪を梳く指が心地よくて、ふと頬が緩んでしまう。

「ねえ。起きてるんでしょ」

鼻歌をやめて僕の頬を指でつつく。
小鳥が果実を啄むような細やかな動きだ。

「バレたか」

「分かるよ。にやけてたもん」

眼を開けて見つめた先で、明るい色が揺れる。

横になったままの僕の上にクセのある髪が落ちてきて、にやけた頬をくすぐった。

「おはよ」

ん、と返事をしながらシーツの中に白い体を引き込もうとするが、するりと躱されてしまう。

向きになって思い切り抱き締めて動けないようにしてやると、くすくすと笑って腕の中に落ち着いてくれた。

「コーヒー淹れるから離して」

「ダメ」

「甘えん坊さんだなあ」

シーツにくるまって恋人の体を抱き締めたまま、ゆらゆらと揺れてみる。

そうするとまた、腕の中で鼻歌がはじまって快いメロディーが流れた。


窓の外の空が青い。
きっと気持ちの良い風が吹いているだろう。

このまま何もしないでベッドの上にいるのもいいけれど、腕の中の恋人は外に出たくてきっとうずうずしている筈だ。

「天気もいいし、どこかに行こうか」

「うん。じゃあまずはコーヒー淹れさせてくれる?」

腕を緩めて解放してやると、ふわりと体が軽くなった。
僕の額にキスを落として軽快な足取りでキッチンに行ってしまう恋人。


一人になってしまったベッドで彼が歌っていた歌を口ずさんで、シーツの上に踊る光を見つめた。



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