Heavy Smoker
僕の恋人はヘビースモーカーってやつなんだと思う。
そう思う、理由は。
まず、部屋の至るところに灰皿が置いてあるから。
ベッドの横、パソコンが置いてあるデスクの上、キッチンにはお鍋なんかと一緒に灰皿が三、四枚常備されているし、お風呂場にも置いてある。
次に、洋服がしまってあるクローゼットの中にいっぱい煙草を買い置きをしているから。
カートン買い?って言ってたっけ。
それから、部屋の壁が黄色いから。
煙草を吸うとヤニのせいで壁が黄色く変色するよね。
部屋中、満遍なく黄色っぽい感じ。
最後に、車の灰皿にいつも煙草の吸い殻が溢れているから。
備え付けの灰皿以外にもうひとつ、持ち運べる灰皿がダッシュボードの中に入ってる。
彼の仕事が休みの日に部屋に遊びに行くと、至るところに置かれたそれぞれの灰皿には必ず煙草の吸い殻が何本かずつ入っている。
けど、僕が一緒に部屋に居るときはあまり吸っていない。
僕に、気を使ってくれているらしい。
そこはエライというか、カッコイイ。
それに、車の中からのポイ捨てなんて絶対しない。
もちろん、歩きながら吸ったりはしないし吸ってはいけない場所で吸ったりもしない。
きちんとマナーが守れる人だ。
さすが、僕の好きになった人だ。
僕と居る間はあまり吸わないようにしてくれているらしいから、少し口寂しそうな時がある。
そういう時はガムを噛んだり、僕が差し入れした飴を舐めたりして、ごまかす。
今度彼の部屋に行く時は、ガムや飴なんかよりもっといいものをあげようか。
煙草のように苦くなく、ガムや飴みたいに甘くはない。
煙草の代わりに僕の唇を。
僕に気を使ってくれている事に対する、感謝の意味もこめて。
口寂しそうな彼の首に腕を絡めて、キスをしよう。
煙草を吸うよりも、代わりに飴を舐めるよりも。
僕のキスに、夢中にさせてあげるんだ。
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