clasSICK

学校の裏門を通って校内を出て東に向かうと、なだらかな下り坂になっている。

その坂の中腹にある十字路を左に曲がり、すぐ右に曲がる。

やはりなだらかな坂になっているその小径の途中には、怪しげな雰囲気の門構えの和風の建物。


くすんだ木製の、分かりづらい看板には、かなり達筆な文字で『かずさの骨董店』と店の名がある。


横滑りの入り口を少し開け、店内に向かって声をあげた。

「すみません」

暫く待つが返事はない。
仕方なく、入り口を全開にし店内へ足を踏み入れた。

艶やかな陶器や煌びやかな花器、解読不能な書画や、煤けた色の掛け軸など骨董と名のつくありとあらゆるものが所狭しと並んで俺を出迎えた。


鼻をくすぐるのは、甘い、香の薫り。


雑多に並んでいるように見えて、計算し尽くされているのだろう、品物の一点一点が際立って見える。

「……」

声もなく、古の匠の技に見入ってしまう。

店構えの趣味の悪さとはかけ離れて、店内のディスプレイをした人物は趣味が良いのだろうな、と思った。

だから、祖母のお気に入りなのだろうか、とも。

ふと祖母の顔を思い出して、自分のすべきことを思い出し、店の奥に向かって再び声をかけた。

「ごめんください!」

先ほどよりはっきりと響いた俺の声に、店の奥で物音と微かな人の声。

店の左奥、葡萄茶の暖簾の向こうから和服の男性が顔を出した。

「いらっしゃいませ」

低く響く声は、深い青の和服とよく馴染む。

小綺麗な男性は不思議そうな顔をしたあと、柔和な笑みを浮かべて、

「ずいぶん若いお客様だなあ。何か御用ですか?」

と、こちらを見つめた。

店の雰囲気と、店員の優美な立ち居振る舞いにのまれてしまった俺は、口を開けたまま応える事を忘れてしまっていた。

「まあ、お茶でもどうぞ」

くすくすと笑いながら、和服の店員は椅子を進めてくれ、涼やかな硝子の碗に冷茶を注いでくれる。

促されるまま茶器に触れ、指先に伝わるそのひんやりとした温度にひいていく汗。

一息に器を空にして、カチャンと硝子の茶碗を置く音に、はっと自分が何をしに来たかを思い出す。

のんびりとお茶をしている場合ではない。

「あの、祖母に頼まれて、茶碗を取りにきました。西ノ宮[にしのみや]といいます」


「ああ。絹[きぬ]さんの。出来上がってるよ。ちょっと待ってね」



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