LOVE PAIN

授業が終わってすぐ、教室を飛び出した。
これ以上ないというほど駅へ急いで、電車に飛び乗る。

電車の中でもそわそわして、他の乗客に不思議な目を向けられた。

ごめんね。
皆さん。

だって、そわそわせずにはいられないんだ。

今日は、二週間ぶりに恋人に逢える日なのだから。



目的の駅で降りて、小走りで駅裏の小径へ。

赤信号で足を止める、一秒の時間すらももどかしい。

足がもつれる程急いで、一階にモダンなカフェの入ったビルにたどり着いた。

でも、僕の目的地はこのお洒落なカフェじゃない。

カフェの横、地下へと続く少し暗い階段を駆け降りる。


年季の入った濃い木目調の扉を開けて、

「チカさん、おかえりなさい!!」

堪えきれずに叫んだ。



本の山の向こう、扉と同じ色をした木目調のカウンターの中から、チカさんが顔を出す。

「ただいま。シオ。早かったね」

店に並べられた古い本の中に響くチカさんの声は穏やかで深い。

声を聞いたら、もうたまらなくなって。

カウンター越しにチカさんの首に抱きついてしまった。

「チカさん、逢いたかった…二週間も逢えないなんて、僕死んじゃいそうだった」

くすりとチカさんは笑って、僕の頭を撫でてくれる。

「私も、シオに逢いたかったよ」

耳のすぐそばで響くチカさんの声と台詞に、痛いほど胸がきゅうっとなる。

「だってね、僕チカさんがいないって、お店に来ても閉まってるって分かってるのに、何度もここまで来ちゃったんだよ?」

とんとん、と僕の背中を優しく叩くチカさんに促されて、首にまわした腕を緩めた。

「二週間の仕入れは少し長すぎたかな。寂しい思いをさせてしまったね」

ごめんね、と頬にキスをくれるチカさん。

小さな音を立てて頬から離れたチカさんの唇を追いかけて、僕から唇を重ねる。


お店の中でこんなことしていいのかな、と思いつつも僕の唇は止まらない。

二週間分の気持ちを込めて、丁寧にチカさんの唇をなぞる。

首を傾けて舌を出し、チカさんの舌をねだるように唇を舐めた。



僕がお店に居る時にお客様が来たことは一度もないから大丈夫だよね、と考えたあとすぐに、

「ストップ。シオ、続きはあとで」

そう言って、チカさんは僕の肩に手をまわすと、ゆっくりと体を離した。



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