青い毛布と口笛とキス

「たっちゃんがゆってたけど、しゅーにーちゃんって、くちぶえふけないの?」

複数の子供の寝息が響く寝室の片隅。
寝ている友達を起こさぬよう、こっそりと都喜[とき]が聞いてきた。

「まだ、練習中なだけだよ」

俺はその時、口笛の練習をするために毛布をかぶった。
成功して、音がなった時の防音の為に。




青い、毛布だった。




毛布の部屋の中で口をすぼめ、息をはく。
ひゅーと低い音が唇からもれた。



もぞもぞと青い毛布の壁が波打って、都喜が俺の隣に入ってくる。

「かんたん、だよ。こーやって…」

都喜の唇がすぼめられ、ピュイッと小さく高い音が響く。

年下の少年に教わるのはイヤだったけれど、都喜の唇から奏でられた音色がとてもキレイだったので。

都喜を真似て唇をすぼめ、息をはこうとした瞬間。


柔らかい感触を、唇に感じた。


あ然とする十二歳の俺。
目をつむり、俺に口づける六歳の都喜。

唇を離した都喜の頬は林檎のように真っ赤だった。

照れながら口づけの理由を話す、六歳の少年。

「あの、あのね。…しゅーにーちゃんのおくち、ちゅーのおくちになってた、から」

恥ずかしそうに、きゃあ、と都喜が顔を布団に埋めた。



年下の少年からの突然のキスに驚いてはいたけれど。

都喜の仕草や表情は、それを許してしまえるほどの可愛らしさだった。



こうして、俺のファーストキスは奪われた。



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