グッモーニン、ダーリン

薄い毛布を手繰り寄せ、幸せそうにむにゃむにゃと身じろぐベッドの上の男に、俺は怒りを覚えた。


はっきり言って、俺の恋人は寝起きが悪い。

久しぶりに休みが重なったので、朝から出かけようと約束をしていた。

いわゆる、デートってやつだ。

そりゃあ、男二人じゃ手をつないで歩いたりできないし、人前で甘い雰囲気になるわけにもいかない。

けれど約一ヶ月ぶりに二人でゆっくり外出できると思って、俺は楽しみにしていた。


なのに、一時間経っても、待ち合わせ場所に来やしない。

仕方なく家に迎えに来てみれば。



さもありなん。
ベッドの上の、この姿。



ゴロリと寝返りをうって、ぽりぽりと首をかく仕草すらも、イライラを募らせる。

しかも、その寝顔がにやっと笑ったものだから。

「…ってめー!いい加減、起きやがれ!!」

怒り、爆発。

毛布を剥ぎ取り、枕をぼふっと顔に押し付けてやった。

しばらくして、鈍い反応がある。

「…、…んあ?」

「んあ?、じゃねーよ!!何回電話したと思ってんだ。ぐーすかぐーすか寝やがって。冬眠中の熊か!!」

「あー…」

ほんとに。
永眠させてやろうか。
今なら枕が凶器になるぞ。

「このっ…熊野郎っ!」

ぼふんっ!ばふんっ!

枕で二度ほど、恋人、もとい熊の顔をぶつ。

「なんだ、現実か…」

「目ぇ、覚めたかよ?」

のそのそとベッドに起き上がる図体は、俺よりもひとまわりもふたまわりもでかい。

それで、ほんとに熊のように見える。

「覚めた。けど、夢かと思った」

「…あ?まだ寝てんだろ。もっかい目ぇ覚まさせてやろうか?」

意味不明な言葉にイライラして、再び凶器(枕)をかまえる俺。

「違う。夢にも、お前が出てきてたから」

凶器(枕)をかまえた腕から、力が抜けて行く。

驚きで、恥ずかしさで。
目の前で笑う表情にセリフに、ときめいて。

「っ…、…と、とにかく、起きろ」

ふにゃっと笑った熊、もとい、恋人の表情は、世界一有名なハチミツ好きの黄色い熊より愛らしい。

もちろん、二回目にかまえた凶器(枕)が振り下ろされることはなかった。



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