恋愛方程式
「せんせぇ…」
どきどきして、くすぐったくて、嬉しくて。
「かける」
名前を呼ばれただけで、胸が熱くなる。
頬を撫で、顔を上向かせる手に任せて。
瞼を、閉じた。
「ん…っ…」
重なる、唇。
感じる、熱。
頭の芯まで、とけてしまいそうな。
「…ふ、っ…ぅ…」
下唇を舌でなぞられて、その感触に息が乱れる。
背中を窓枠に押し付けられ、優しい手からは想像もつかないような激しい、キス。
「んっ、…っ…ぁ…」
先生の手が僕の腰にかかった、その時。
カララッ
ドアが開いて、慌てて唇を離した先生と僕の前に現れたのは。
得体の知れない英語教師。
二十八歳。やっぱり独身。
抱き合う僕と先生を見て、
「…ちゃんと鍵は閉めた方がいいですよ」
言うことそれだけですか?
しかも、満面の笑みで。
「すみませんけど急ぎなので、お邪魔しますね」
そう付け足して、先生の腕の中で呆然とする僕と、それを隠そうとする先生を無視して印刷機をまわし始めてしまった。
先生は急いで僕を印刷室の入り口まで誘導する。
あ…土足なの忘れてた。
床、砂だらけだよ。
先生は英語教師としばらく話をするみたい。ちらりと印刷機の方を盗み見て、苦笑い。
が、がんばれー…。
帰ろうと背を向ける僕の肩が、優しい手に捕えられた。
「翔、続きは今度な」
耳元で響く、艶やかな先生の声。
顔を真っ赤にして振り向いた僕に、唇の端を上げて笑う。
英語の先生にバレた事よりも、先生の囁きと笑顔に、飛び出しそうになった僕の心臓。
も、もっと
鍛えておかなくちゃ!!
***
きっと、恋愛に「正解」なんてない。
だから、計算するだけ無駄でしょう?
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