君のうしろ

席替えから五日目。
三上 駿介による(以下略)。
その四。

爽やかな好青年、見た目は切長の瞳のせいもあってややクール。
けれど、笑顔が人懐っこい。

笑うと、右の目尻に笑い皺が一本浮き出る。
駿介以外に、それを知る者はいないだろう。

話の端々で安西が笑う度、駿介は右の目尻に釘付けになる。
今も、半分体を駿介の方に向けて笑っている安西から目が離せない。

始業のチャイムと共に、その笑顔は正面に向いた。



「三上」

「…えっ?はい」

またしても、ぼーっとしていた駿介は担任に名前を呼ばれて返事をするのが一拍遅れてしまう。

「放課後、ちょっと雑用手伝え」

「えー…何で、俺?」

「昨日小テストでカンニングしようとした罰だ」

「未遂だったじゃないですか」

「それに、最近少したるんでるらしいな?」

…たるんでる?俺が?

「とにかく、放課後英語科準備室に来い」





「昨日お咎めナシかと思ったら、今日来たかぁ…災難だな、シュン」

耕一は人の些細な不幸を哀れむようなヤツではなかった。

「まぁ、雑用だしすぐ終わるってぇ。ね?シュンちゃん」

「じゃあ、オマエも来いよ」

「たるんでるシュンちゃんが悪いんじゃーん。あら、やだ。お腹もたるんでなぁい?」

むしろ楽しんでいる。

「ばっ…!シャツを、めくるな!!」

その時、クスクスと聞こえた笑い声は、山本のものだった。

「松江と三上、仲イイねぇ」

笑いによって赤く染まった頬はとても魅力的に見える。
普段はぱっちりと大きな瞳が、細められるのも。

「コイツが、くっついて来るんだよ」

駿介のシャツをめくろうとする耕一の手を、ふりほどく。
意外にあっさりと耕一の手は離れた。

「でも、小テストでカンニングしようとしたくらいで、先生も意地悪だよね」

「はぁ。雑用って何すんのかなぁ?」



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