君のうしろ
席替えから二日目。
三上 駿介による、安西 直志観察日記。
その一。
涼しげな切れ長の目に、ほどよく焼けた肌の色。
身長は172cm以上178cm未満。
髪は染めてない、真っ黒なまま。
耳にかかるくらい長めに伸ばしてはいるが、野暮ったい印象はない。
肩幅が、
「三上くん、呼ばれてるよ」
うん、呼ばれてる。
「……………え?」
授業中だということも忘れて、安西の観察に没頭していた駿介は、一瞬何が起こったのか理解できずにいた。
隣の席の山本玲奈[ヤマモト レナ]が、困ったようにこちらを見ている。
「こら〜三上。居眠りするな。眠るならバレないようにやれ」
そんなムチャな。
というかバレなきゃいいのかよ!
やる気のないジャージの数学教師は、突っ込み所満載のセリフを吐く。
「前の問題解けってさ」
安西が黒板を指差しながら教えてくれて、ようやく自分の立場を理解した。
黒板の数字の羅列に、意味はあるのだろうか?
「居眠りしてたんじゃねぇ…」
不満げにぶつぶつ言いながら前に出、うんうん唸りながら間違った答えを黒板に書いた。
完璧に間違ってる、という教師のボケに教室に笑いが起こる。
頭を掻きながら、席に着く。
横を通り過ぎる時、ちらりと見た安西は微苦笑を浮かべていた。
『…バカだと、思われたか?』
椅子に座ると、安西の背中が目の前にある。
肩幅が、割と広い方だ。
筋肉質な背中だということが、制服のシャツの上からでも分かった。
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