Sugar boy

呆けながら、聞き返す。

「ふたば……今、なんて?」

「だからぁ、ひとりエッチ!!どうやってするか聞いてるのっ」

顔を真っ赤に染めながら、俺の肘のあたりを睨みながら双葉は言う。
恥ずかしいならそんなこと聞くなよ…。

くるんと上向いたまつ毛、それに縁取られたつぶらな瞳。
その黒はどこか興味の光を湛えていた。

そんな双葉に、俺は口からビール、じゃなく、鼻から血を噴きそうです。
けど、ここで双葉を襲ってしまったら、ただの変態お兄さんだ。
俺だって、それくらいはわきまえている。

「そういうことは…と、友達にききなさい」

本を読むフリをしながら、頑固なお父さん風を装って固い口調で断る。
偉いぞ、俺。

「だって」

双葉が俺の腕をつかむ。
ドキリとして、思わず横に顔を向けてしまった。


「友達にきいたら、バカにされちゃったんだもん」

眉を八の字に歪めて、潤んだ黒い瞳で俺を見つめてくる双葉。

だ、だもん、て。
反則だろ!!
その前に男の子なのに、何でそんなにほっぺがピンクになるんですか。

待て、待て。落ち着け、俺。
大丈夫。
股間が疼いてるような気がするのは気のせいだ。

「したことないの!?って言われたから…勢いでひとりエッチくらいしたことあるって言っちゃったんだ」

缶ビール四本目だし、動機も疼きも気のせいだ。

「ねぇ、ひーくん」

気のせい、気のせい。

「お願い…」

気のせい…

「ひとりエッチのやり方、教えて?」

じゃ、ない。


ぱん、と本を閉じて体を起こす。
布団の上にあぐらをかいて座ると、双葉も起き上がって俺の前に正座をした。

「やっぱり、ダメ?」

ありがちな攻撃(上目遣い)にもくらっときてしまう。

か…かわいいっ。

黙って双葉の顔を見つめていると、頭を垂れてしゅんとしてしまった。

「分かった…いいよ」

嬉しそうな声にならないように、抑えて短く返事をする。
ぱっと顔を上げる双葉。

「ほんとに!?」

その目は、キラキラと輝いていた。

「うん…教えてやるから下、脱ぎな?」

「え?」

「え、じゃなくて、服着たままじゃやりにくいから脱がないと」

「……」

恥ずかしげに手をもじもじさせて、黙っている。

「それとも…俺に、脱がせて欲しい?」

双葉の鼻先に顔を近づけて笑みを浮かべ、囁く。

なるべく意地悪な笑顔に見えるように。

脱がせるのも楽しいが、恥ずかしげに自分で服を脱ぐ双葉を見たいと思ったのだ。


双葉は一瞬俺の目を見て、すぐに視線を反らす。
何も言わずに立ち上がって、はいていたズボンをゆっくりと脱ぎ落とした。



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