Key

「まだ怒ってるのか…」

泉の声が背中の向こうから聞こえる。

あのあと、変な体勢でしたためか腰が痛くなって、泉にベッドに運んでもらった。

「悪かった。あんなところで抱いて」

泉は玄関なんかでしたから俺が怒っていると思ってるみたいだ。
俺が背中を向けて、口を開かないからなんだろう。


本当は、怒ってなんかいない。


ただ、泉の顔を見るのが恥ずかしいだけだ。
あんなところで抱かれたことが。
しかも、いつもより感じてしまった。

外に聴こえるかも、なんて考えていたのに、思いっきりよがって。

ちょっと前は、鍵をなくしたことが後ろめたくて泉の顔を見ることができなかった。
けれど今は、恥ずかしくて顔を合わせることができないでいる。

「……カギ」

違う話に変えようと、ぽそりと呟く。

「鍵?」

同じ単語を繰り返して、先を促す泉。
俺は背を向けたまま、いっきにしゃべる。

「ここのカギ、なくした。ごめん」

泉が笑ったような気配がした。
後ろから腕を伸ばしてきて、

「だから、外で待ってたのか」

俺の体を包んだ。


ぎゅっ、と力強く抱き締めてくる腕。
右手は腹のあたりに回されて、左手は俺の頭を撫でる。

いつもなら、頭を撫でられるのは好きじゃない。
けれど、今は何だか甘えたい気分だった。

「明日、一緒に作りに行こう」

優しい言葉に、素直に頷く。
心が軽くなったような気がした。


けれど、泉の次の言葉に体が凍りつく。

「だから……もう一回」

「は?…え!?いや、俺、今日はもうムリ…ぅわ、ぁ!!」

「今日の鷹大、すごくカワイイ…」

「かっ、かわいいって何だよ!!ちょっ…ケツを揉むなっ!!」

「嬉しいくせに」

「なっ!?…ま、待てって!!ぁ、ゎわっ!!…泉っ、ほら…あのっ、く、クルミが呼んでるぞ!!」

「んー…クルミとはあとで遊んでやる。先に鷹大と…」

「やっ!俺はもう充分だからっ!!…っン、…!!ぅわぁ―――っ!!」





ふとした瞬間、溢れ出してしまう思い。
その鍵は、いつも君が握っている。



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