かわらないもの
しばらくして涙は止まる。
呼吸も少しずつ落ち着いてきた。
落ち着いてくると、恥ずかしくてたまらない。
昨日の自分の行動。
そして、今の状況が。
僕はまだ晃歩の腕の中。
晃歩は僕の髪を撫で続けている。
額の上にあたる柔らかい感触は、晃歩の頬だろうか。
それとも、唇だろうか。
「旭、落ち着いた?」
晃歩が口を開くと息がかかって、唇があたっているのだと分かった。
腕は僕を抱いたまま、そっと額の上から唇を離す。
柔らかな感触が消えて、少し残念だと思った。
恥ずかしくて、顔を上げられない。
だけど。
晃歩はどんな顔をしているんだろう?
それが、知りたい。
顔をあげようか、迷う一瞬。
僕の頬に、音をたてて晃歩の唇が触れた。
びっくりして、思わず顔を上げてしまう。
間近に、晃歩の顔がある。
あの頃と、かわらない笑顔で。
まっすぐに僕を見つめていた。
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