かわらないもの

翌日、慣れない全力疾走をしたせいか熱を出し、学校を休んだ。

晃歩からは何の連絡もない。
朝も迎えには来なかった。

布団を被って、流れる涙を拭いもせずにすすり泣く。

自分で、めちゃくちゃにしたくせに。
自分が、晃歩に嫌われるように仕向けたくせに。
泣く資格なんてない。
分かってるけど、とまらないんだ。

「……っ、ふ、ぅ、……く…」

晃歩は今ごろ、加藤さんと放課後デートでもしているんだろうか。
お昼も、加藤さんと食べたんだろうか。
笑って、仲良くしているんだろうか。


僕のことなんか、忘れて。


「ぅ…涙、流しすぎ、で、溶けて消えちゃえ、たら…いいのにっ……」

「それは、困る」

突然聞こえた、聞こえるはずのない声に、がばりと起き上がって、声の正体を見つめた。

「……なん、で」

どうして、ここに、いるの。

「あきほ……」

泣きすぎて枯れた声で、名前を呼ぶ。

「何でここにいるかって?……何でだと思う?」

真剣な顔で僕を見つめる瞳が、見たことのない色に光った。
僕は答えることができない。
ただただ、涙が流れる。
晃歩が、ここにいることで。

「泣きすぎたろ……ほんとに溶けてなくなる気か?」

逞しい指が、優しく頬に触れた。

「……せっかく、俺たち、両想いになれたのに」

言葉の意味を理解できない。
口を動かしてみるが、声は出ない。
ぴくりともしない僕の体を、晃歩の腕が包んだ。

「泣くなよ、旭……」

頭が、真っ白に、なる。

ねぇ、晃歩。
どうして、そんなに切なそうな声で僕の名前を呼ぶの?

「だって、晃歩が…僕のこと……だって、なんで?か、加藤さんは……?」

聞きたいことは、たくさんあるのに。
言葉にはならない。
涙で震える声で、ますます意味の分からないものになってしまう。

晃歩は背中を撫でてくれながら、ゆっくりと話してくれた。


加藤さんのことは、断ったよ。
本当は、最初から断るつもりだったんだ。
旭の気持ちが知りたくて、わざと返事を引き延ばしたんだ。
嫌な思いさせてごめんな。
俺が好きなのは、旭だけだよ。
ずっと、ずっと、旭が好きだった。


霞む頭で聞いた話は大体こんな内容だった。





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