かわらないもの

黙ったままベッドに向かって歩いていく。
膝をかけると、ぎし、と軋む音がした。


それが、晃歩と僕の関係に入った、ひび割れの音のように聞こえた。


壁にもたれて、足を伸ばして座っている晃歩の横に、四つん這いになって近づく。
そして、晃歩の顔の両脇に手をついた。
逃げられないように。



もう、どうにでもなれ。



「あ、旭…?」

驚いている晃歩には構わず、ゆっくりと顔を近づける。

「これでも?」

「…え、…っ!!」

呆けている晃歩の唇に、僕の唇を触れさせた。
キスされる、なんて思ってもいなかったんだろう。
晃歩はあっさりと唇を許した。




まぶたを閉じれば、鮮やかに彩られる日々がある。
そこには、いつも、晃歩がいる。




「これでも、友達だ、なんて言える?」

唇を離し、ほんの数ミリの距離でささやく。
晃歩は目を見開いて僕を見つめたまま、何も言わない。

「僕は、晃歩の、ことが…」

離したばかりの唇は震えて、言葉の続きを妨げたがっているみたい。



「晃歩が、好きだよ」



それだけ言って、晃歩から離れた。
晃歩の言葉も待たずに、カバンを抱えて部屋から飛び出した。


僕のことなんか、嫌いになってしまえばいい。
そして、恋人と仲良くやればいい。
恋人と仲良く笑い合う隣で、ただの友達として応援するなんて僕にはできない。


だから。

「ばいばい、あきほ」

涙でにじむ視界を振り切るように。
晃歩への想いを、置き去りにするように。
家までの短い距離を、全力で駆けた。



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