かわらないもの

この時まで、気付かなかった。
もうひとつ、大きく変わっていたもの。


あの頃とは違う晃歩を見る、周りの目。


僕が見てもこんなにかっこいいのに、女の子が放って置くわけがないんだ。
なんで、気付かなかったんだろう。

そう考えて、すぐに、違うと僕は思った。

違う。
気付かなかったんじゃない。
気付かないふりをしていただけ。
それに気付いてしまったら、晃歩が僕から離れていってしまうような気がして。

「それで……どうするの?」

晃歩は右手で顔をおさえて、バツの悪そうな表情をしていた。

「できれば、今週中に返事が欲しいって言われたから、考え中っ!!」

「え?なんで?考える必要ないじゃん!」

「そ〜だよ。告白されたって喜んでたくせに〜。ガツガツ晃歩〜」

「うるさいよ。お前ら」

何で、何でと彼らはいつまでも晃歩にまつわりつく。


僕にこの話題は聞かれたくなかったんだろうか。
そのあと、晃歩はいっさい口を開かなかった。


****


授業が終わると、僕のクラスの入り口で晃歩が待っていた。
いつものように、駐輪場に向かうけれど、何となくお互いに黙ったままだ。

無言で自転車を準備する晃歩。
僕は自転車に乗れないから、晃歩の後ろにのせてもらって登下校している。
自転車のカギを外す間、駐輪場の柱に寄りかかって晃歩を待った。

カゴには重なった二人分のバッグ。

僕の歩調に合わせてゆっくりと自転車をおす晃歩の横顔をちらちら見ながら、二人並んで学校を出る。


校舎が見えなくなったところで、いつものように二人で自転車に乗った。

晃歩はペダルに足をかける。
僕はその後ろに腰をかけた。

いつもと同じ行為のはずなのに、どこがぎこちないのは何でかな?
なんだか、少し悲しくなって。


甘えるように、晃歩の広い背中に額をくっつけた。


ペダルを踏む晃歩の体はゆらゆらと揺れる。
それに合わせて僕の体もゆらゆらと揺れ続けた。





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