VANILLA
「暑いなら、クーラーのある部屋で横になればいいのに」
ナツの頭の横に腰を下ろして、残り僅かになったアイスを傾けた。
「知ってるでしょ…。クーラーの風ってキライなんだ」
棒にこびりつくアイスを舐めとる舌は、少年のものとは思えない、鮮やかな色。
暑さに負けて、棒を伝った名残の果実が、ナツの頬にぽたりと落ちた。
溶けたアイスの零れた箇所に無意識に手を伸ばすが、肌に触れた瞬間、俺は慌てて手を引く。
クーラーの風と同じように、ナツは殊更他人に触られるのを嫌悪するのだ。
焦る俺の思いとは裏腹に、ナツは柔らかく笑っていた。
「だいじょうぶ。イチ兄の手は、気持ちいいよ…」
その言葉で許しを得たような気がして、俺はゆるゆるとナツの肌を撫でた。
頬のアイスを拭って、口元、そして汗で湿った首筋へ。
タンクトップの緩んだ胸元から心臓の上を。
本能に任せて指を動かす俺を、ナツは咎めようともしない。
うっとりと眼を細めて、短い息を吐くナツの表情を見た瞬間、俺の身体は完全に熱を持った。
ナツの頭の横から移動して、覆い被さるように上へ乗る。
両手を使ってナツの服をまくり上げ、露わになった肌色に舌を這わせた。
「ンっ…!イチ兄、冷たい…」
先ほどまで氷菓を含んでいた舌は肌の温度には冷たすぎるのか、身を捩って抗議するナツ。
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