Mr.Vampire!

ため息はソファの上に置いて、さっさとベッドに移動する。
移動距離が短くて済むのは、狭い部屋の良い所だ。

「ソファで良かったのに」

「俺は嫌だ。ソファは寛ぐ所であって、いちゃつく所じゃない」

「たまには違う場所でしようよ。キッチンとか」

「ごちゃごちゃ言うなら、今すぐ帰るぞ!」

「冗談じゃーん」

何のかのと言いながらしっかり服を脱がす貪欲さに、呆れる所か感心してしまう。

「あー…。やっぱり、いい匂い…」

すん、と鎖骨の辺りを匂われて、ぞわぞわと表現しがたい感覚が背筋を駆け上がる。

濡れた舌が首筋を這い、指先は身体の輪郭をなぞった。

音と熱に高められて、快感一色になる思考。

「―ン、…は、っ…それ、やめろ」

「どれ?」

「…、嗅ぐな」

今も、触れるか触れないかの鼻先が耳のすぐ下にある。

「ふふっ。分かった。じゃあ嗅ぐのはやめるから」

左手で耳の後ろの髪を掻き上げられ、指でつう、と肌をなぞられた。

嫌な、予感。


「思いきり、かぶりついていい?」


薄い皮膚一枚に護られた、その下に、血管に。
噛みつくのが大好きな変態なのだ、この男は。

けれど首筋なんかに歯形を残されては、俺だって堪らない。

「そこは、ダメだって」

「無理。ガマン、できない…」

「い、ァっ…――!」

白い歯が、肌に食い込む感触。

その痛みで喘いでしまった俺も、変態だろうか。



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