みつばちとキス

上顎からぞわぞわと駆け巡る甘い痺れ。

それに気付いてか、爽真はそこばかりを執拗になぞった。

「っ…!ふ、っく…」

言葉を発しようとしても、爽真の巧みな唇はそれを許してはくれなかった。



どのくらいの時間、そうしていたのだろうか。

唇を離した時には、昌也は爽真の舌に蕩けきって、ふらふらだった。

爽真はふらつく昌也の体を支え、優しく頭を撫でる。

「…ちょっとやりすぎたね。大丈夫?」

部屋の中にいる朋己に聞こえないように、囁き声で爽真が喋るので、昌也の体の熱は一向に冷めなかった。

「大丈夫じゃないよぉ…」

甘い声で爽真の体に縋って、ありったけの力を腕に込める。

「僕も、大丈夫じゃなくなりそう…」

昌也の見せる淫らな表情に、爽真も理性を失っていた。

爽真の手が、次の行為を開始しようとした瞬間、音を立ててすぐ横にあるドアが開いた。

「何してんの?」

慌てて立ち上がった爽真に、部屋から出てきた朋己は訝しげな顔をする。

「昌也くんを説得してたんだ、今日は帰るね、って」

「ふーん。帰んの?」

「…うん」

何事もなかったように、爽真は帰る支度をして、しゃがみ込んだままの昌也に声をかける。

「昌也くん、またね」

心ここにあらずと言った様子で、頷く昌也。

爽真も名残惜しそうに微笑んで、階段を下りた。

「じゃあ、朋己。また明日」

「ああ。明日な」

朋己は爽真を玄関まで見送りに行って、一人で二階へと戻る。

部屋のドアの横には、先ほどから一ミリも動いていない昌也がいた。

「で、お前は何してるわけ?」

呆れたように言うと、昌也は何とも言えない表情を浮かべて朋己を見る。

何も言わないまま立ち上がったかと思うと、ヨロヨロと自分の部屋へ戻っていく昌也。

「?…変なヤツ」

そんな昌也に首を傾げながら、朋己も部屋のドアを閉じた。



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