星の声がきこえる

伝えたくて。

星の命は、いつか終わってしまうから。





白い光が落ちていた。

冬の星空を仰ぎ、小さな煌めきに感嘆の息をはきながら、桐野 夏彦[キリノ ナツヒコ]は公園の高台に立つ。

満ちるのを僅かに待つばかりの月と同じように、夏彦も待っている。

彼の、織り姫星を。


大事な話がある、と呼び出したので、まさかすっぽかされることはないだろうとは思うが、それでも不安だった。


来て、くれるだろうか。


不安に苛まれながら、冬枯れの草の上を行ったり来たりする。
携帯電話の画面で何度も時間を確認し、空を見上げる。

今夜は、星の動きが信じられないくらい遅い気がした。

「さっみぃ!こんな時間に呼び出して、何だよ…」

悪態をつき、ポケットに手を突っ込んだ状態で、滝本 氷織[タキモト ヒオ]は高台にゆっくりと歩んでくる。

その姿を見て、夏彦はほっと胸を撫で下ろした。

「うー、寒い!」

「氷織。良かった…来てくれて」

「…気が向いたからな」

寒い寒いと言いながら、肩を震わせているのに、気が向いただけだと言う。

そんな氷織に、夏彦は笑みを浮かべた。

「で、何?また天体観測か?」

夏に、学校の屋上で夏彦の天体観測に巻き込まれてしまってから、氷織は何度か手伝わされていた。

けれど今日は、望遠鏡も記録ノートも持ってきてはいないようだ。

不思議に思いながら、氷織は夜空を仰ぐ。

「…あ」

寒さに肩を竦めて、足元ばかり見ながら歩いていたので、氷織は気づかなかった。

凍るような闇の中の、小さな白い光に。

「月が出てても、よく見えるんだな」

上向く氷織の茶色い瞳に、無数の星が落ちる。

「あれは分かるぞ。オリオン座」

なあ?、と氷織が夏彦の方を向くと、ばちっと視線が合った。
星空なんて少しも見ていない夏彦。

氷織ばかりを見つめて、小さな煌めきを見るときよりも、うっとりとした色の瞳。



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