DEAR

充電用のコードと、コンセント一つあれば、設備としては事足りるにも関わらず、専用のベッドと、デスクと電子端末。

革張りの、いかにも座り心地のよさそうな一人掛け用ソファは、縦長の大きな窓の横に置かれ、外の景色を見るのにちょうど良いだろう。


大海の耳の後ろにある、充電用のソケットを確認する。

両耳の後ろから無機質なコードが伸び、それが途中から一本に縒り合わさって、ベッドの縁に備え付けられたコンセントへ。

ベッドに横たわり、目を閉じて、まるで眠っているかのような大海の横顔を、充電中を知らせる青白い光が照らしていた。


暗い海に棲む、夜光虫のように。

儚げな、それでいて力強いその色は、大海の、アンドロイドの命の色だ。


特殊シリコンの白い輪郭が透けて、鋼の身体の内部で、電解液が同じく青い色に輝いている。

大海の膚[はだ]にそっと、耳をあてる。

僅かに温度の残る膚の下から、潮騒が聞こえないのが不思議な程だった。

静かな眠りを確認して、ワタシは大海の部屋をあとにした。






翌日、ワタシは目覚めるとすぐに、大海の部屋へ向かった。

昨夜から、一ミリも動いていないままの大海の耳の後ろに手ををのばし、コードを抜く。

右耳の内側にある電源スイッチを入れると、電子音と共に起動が始まった。



大海が起動するまでには暫く時間がかかるので、その間に着替えを済ませ、身支度を整える。

顔を洗い、髪をセットして再び大海の部屋へ行くと、丁度起動が完了した所だった。


横たわったまま大海は、パチパチと瞬きを繰り返し、ゆっくりと身体を起こす。

鋼の身体の重みで、マットレスのスプリングがギシギシと軋んだ。



←[*] 5/19 [#]→
目次へ

MAIN
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -