青い繭の中
その言葉に驚いて、陽ちゃんの目が開かれるが、俺の行動は速い。
「ちょ!葉月[はづき]…や、めっ」
口を押さえようとする陽ちゃんの手の動きが、カタツムリよりも遅く感じられるほど。
シーツの繭に包まれたままの腰のあたりに遠慮なく腕を回して、少し乾燥している陽ちゃんの唇を塞いだ。
「…、〜っ!」
カサつく唇の皮に潤いを分け与えるように、舌先で湿らせて、下唇を緩く吸い上げる。
「ふ…、ンっ…」
陽ちゃんの意識が完全に覚醒したのが分かったが、今更止められる筈もない。
「どうする?…起きる?」
陽ちゃんの頬に唇をあて、低めの声で囁くと、
「っ……起き、ない」
恥じらう声で、しっかりとした返答があったので、口づけを続けた。
明るい所だと、陽ちゃんがイヤがるのが分かっていたので、手繰り寄せたシーツを自分の頭の上まで引っ張る。
青い繭の、外の日差しを透かして。
一瞬にして青みがかる、陽ちゃんの白い頬。
「陽ちゃん…」
名前を呼んで、本格的にコトを始めようとする俺に、呆れたように小さく溜め息をつく陽ちゃん。
「葉月のスケベー」
くっ、と押し殺したように笑いながらも、俺の首に腕を回してくる陽ちゃんがたまらなく愛しかった。
ベッドの上の、青いシーツの繭の中。
何者にも邪魔されない、二人の時間は過ぎてゆく。
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