はなのひ
八月五日
くもりのちはれ
花火大会当日。
花火があがるのは八時半から一時間。
携帯の画面を見ると、時刻は八時十五分。
恋人から最後にメールがあったのは七時四十一分。
『今から会社出る。
八時にそっちに着くと思う。』
もう十五分も過ぎちゃってる。
…道が混んでるのかなぁ?
でも、もしそうだったらメールか電話がくるはずだし。
…僕、待ち合わせ場所間違えたかな?
そう思ってメールの履歴を確認する。
『河川敷の蛍の絵の階段の所』
僕の横には階段の手すりが始まる柱がある。
その柱の中ほどには蛍の彫刻。
場所も間違っていない。
…もしかしたら、下にいるかな?
手すりに手を置いて、十段ほどの幅広の階段をゆっくり降りた。
河川敷の砂利を踏み、きょろきょろと周りを見渡す。
やっぱり彼はどこにもいない。
人混みの中に彼の姿を探しながら、もう一度階段の上まであがってみた。
そして、一番上の段に足をかけた時、花火開始の放送が流れた。
ヒュル〜…
ドォン!!!
花火は次々に空に打ち上げられていく。
赤、
紫、
緑、
青、
水色、
ピンク、
オレンジ…
様々な光に彩られた夜空はこの世のものとは思えないほど、キレイだった。
そして、その光景に感嘆の声をあげる周りの人々の喧騒が、僕がひとりで空を見上げているという事実を目の前につきつける。
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