Triangle
どんなに想っても、先の見えない不毛の恋。
それが、不器用な俺の在り方。
「美優[みゆう]、俺さ、」
俺と美優は幼なじみ。
俺は男で、美優は女だけど、思春期の幼なじみ同士によくあるもめ事も特になく。
互いのとんでもない失敗談、とか。
いつまでおねしょしてた、とか。
初恋はいつ、誰に、とか。
「二条のこと、好きかも」
好きな人は誰、とか。
何でも話せちゃう間柄なんです。
「…、昌志[まさし]。それ、本気?」
何でも話せちゃう間柄なんですが。
「…うん」
「二条、先生だよ?しかも、」
今回ばかりは少し。
「男じゃん!!」
勝手が違ったようです。
呆然とする美優の口に、チョコレート菓子を放る。
「何だよー。いつもみたいに応援してくれないのかよー」
ふんっ、と拗ねたふりをして美優の机に突っ伏した。
「や…流石にびっくりしたわ…。昌志が惚れっぽいのは知ってたけどさ」
ゆっくりと、俺の頭上で美優がチョコレート菓子をかじる音がする。
「まさか、男に惚れるとはねえ」
口の中でチョコレート菓子と一緒に噛み締めながら、美優は言う。
「で、二条の何が。昌志の琴線に触れたの?」
机に突っ伏した俺の背中を、美優が人差し指でうりうりとつつく。
「ちょ…バカ、やめろよ」
背中が弱い俺は半笑いになりながら、慌てて机から起き上がった。
「うん。で?」
何の悪びれもなく、美優が先を促す。
「…自分でも、よく分かんねー。強いていうなら、何となく?」
教室の窓の向こうに二条の姿を見つけて、そっちに夢中になっていた俺は、その時の美優の表情を見逃してしまった。
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