トカゲのしっぽ
「また別れたんだって?」
放課後の教室でのんびりと惰眠をむさぼる幼なじみに向かって、俺は問いかけた。
「んー?…うん」
内心緊張気味の俺とは裏腹に、机の上に突っ伏したまま覇気のない口調で洸[コウ]は答える。
自分の恋愛問題について問いかけられているというのに、洸の返事はまるでやる気がない。
「すぐに別れるなら、何でつき合ったりするんだ?」
「…分かってるクセに」
確かに、洸が恋人と長く続かない理由を幼なじみの俺はよく知ってる。
言い寄られて、オーケーして、家の事情を詮索され始めるとすっぱりと切るのだ。
大抵相手の想いが強まり、洸の事をすべて知りたいと思うようになる頃、二ヶ月が節目。
「…今回は何ヶ月もった?」
「一ヶ月ちょい?かな」
高校に入学して一年も経っていないのに、昨日別れた恋人で犠牲者はすでに五人目。
洸の雰囲気がどこかミステリアスだからこそ、彼(女)らの知りたいという欲求は強くなるのだろう。
「いちいち詮索されるの、ウザいんだよね。説明するのもめんどくさいしさあ」
けれどそれは、洸にとっては逆効果だ。
突っ伏したままの不満を口にする声はくぐもって聞こえる。
その表情は、見えない。
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